■朔の夜に…             2007年11月10日

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・い、ああ・・・!」

 

 

押し寄せる快楽に溺れ落ちていく自分がわかる。

 

何度、犬夜叉に問いかけても

無言のまま、知り尽くした私の躰(からだ)の

ありとあらゆる場所に攻めの手を緩めない。

 

 

いつから、私はこんなにも淫らになったの?

 

犬夜叉の手に踊らされ

髪を振り乱し

時折、卑しくも口元から緩い液体をもこぼし

目を潤ませて

 

逃げ出すように躰を引きつつも

彼の突き上げてくる勢いに否応無しに反応する

 

 

「あ!あ!・・・い、・・・犬・・・あああん!」

 

「はぁ・・・はっ・・・あっ・・・あっ・・・!」

 

 

何度、名を呼んでも何も応えずに

激しく腰を叩きつけてくる人間であるはずの

それでも逞しい鋼のような犬夜叉の肉体。

 

 

「ああ!駄目!・・・もう駄目!・・・ああっ・・・っ!」

 

 

自分でもはっきり分かるくらいだった

下腹部から何か貫いていく白光のような快感。

 

 

犬夜叉も気がついたはず

私が頂点まで行き着いたことを・・・

 

それでも、犬夜叉は無言のまま

汗を流し、頬を高揚させ

ただ薄っすらに目を細め、

私を見つめては

動きを止めようとはしない

 

いや、むしろ、ますます激しくなっていく

 

 

「・・・ね、・・・い、犬夜叉ぁ・・・!や・・・これ以上!」

 

「はぁ・・・はっ・・・あっ・・・あっ・・・!う・・・!はぁ!」

 

 

熱い吐息だけが応えにならない応えとして

私の体の上で重くのしかかりながらも

まるで、たまごでも抱きしめるかのように包み込み

強く激しく私の中の芯を貫くかのように進退を繰り返す。

 

でも、もう駄目!

 

いや!

 

これ以上・・・!

 

 

頭の中の混沌とした意識

朦朧とした視界

 

しがみつく力も失せそうで

それでもしがみつかないわけにもいかない指先が

人間の犬夜叉の背に爪で紅い愛の溝をつけていく。

 

 

「あ!や!もういや!止めて!」

 

 

思わず叫んでしまった私は

犬夜叉ののしかかった引き締まった固い胸板を

思い切り、押し出した。

 

結果なんて言わずとも知れている。

 

人間であっても

あんたは間違いなく強い男。

 

誰よりも力強く

誰よりも傲慢で

 

でも

 

誰よりも・・・

 

 

「や!いや!・・・わ、私・・・!」

 

「はぁ・・・はっ・・・!」

 

「いやぁ!壊れちゃう!止めてぇ!」

 

 

その言葉にようやく動きを止めた・・・

 

と、思えば、それは違った。

 

 

私の躰を裏返し、

力尽きた腰を持ち上げ

まだ猛々しい熱い杭を差し込んだ。

 

 

「ああ!いやぁ!」

 

「ぁ・・・ぁっ・・・あっ・・・あっ・・・!」

 

 

体中に響く特有のリズムと共に

私の中で何かが解れ毀れるかのように

下腹部の更にその奥まで

 

何かが揺れ動く

何かがざわめく

 

 

「やぁ!犬夜叉!壊れ・・・駄目!や!」

 

「あ・・・ああ・・・!」

 

犬夜叉の口から聞こえる声が消えるときは

私の背に口付けを落としたときだけ。

 

その度にまた別の感覚が私を支配する。

 

 

堕落?

 

淫猥?

 

 

私は・・・・

 

 

「・・・もう、止め・・・や!ああ!」

 

「・・・・まだだ・・・!」

 

「・・・や!壊れちゃう・・・・!いや!ああ!」

 

「・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

一際激しかった愛の嵐が過ぎた後の彼は一段と優しかった。

私をさも真綿を手に包むかのように

優しく抱きしめ、腕の中にと収め離さない。

 

いつもと違うような人間の犬夜叉。

 

 

どうして、こんなにも

寡黙に

激しく

私を抱いたのか・・・

 

聞きたかった

知りたかった

 

 

ようやく顔を動かせるようにまで

落ち着いてきた躰で

犬夜叉のほうへと視線を向けたとき

 

彼がじっと私を見つめていたことに気がついた。

 

 

「犬夜叉、・・・今日はどう・・・。」

 

「俺の中で、お前を壊したいと思った・・・。」

 

 

私の言葉を遮りながらも

彼はその応えを小さな声で語る。

 

 

“壊してしまいたい”という言葉の裏

“男特有の独占欲”さえ私はもう知っている

 

あんたに愛されて知った

愛の表現

 

 

でも、犬夜叉の言葉の続きに

あまりにも意外な応え。

私は目を開けずにはいられない。

瞬きすら忘れるような

あんたの言葉に息を飲む。

 

 

 

・・・・え?

どういう・・・こと?

 

 

「無茶させて・・・悪かった・・・。」

 

 

黒い瞳が切なく私を見つめる。

どうして、そんなに悲しそうな目で私を見るの?

 

あんなにも傲慢なあんたが

そんな顔するなんて

 

こんなにも激しく愛し合った後なのに・・・

 

どうしたの?

犬夜叉?

 

 

「お前が“じゅけん”とか言って、暫く会ってなかったよな・・・。」

 

「・・・うん・・・。」

 

「お前、まるで俺のことなんか眼中になかったようによ・・・。」

 

「でも、あんたのおかげで試験も無事受けれたし・・・。」

 

「・・・・。」

 

「すんごい助かったのよ?いてくれて本当によかったって・・・。」

 

「・・・でも、・・・。」

 

 

あんたは間違いなく強い男。

 

誰よりも力強く

誰よりも傲慢で

 

でも

 

誰よりも・・・

 

 

――――お前がいない間・・・・

 

 

「ごめんね、犬夜叉・・・。」

 

「いや、でも今日は無茶した・・・。悪かった・・・。」

 

 

伏せた瞼のまつ毛の長さが

あんたの募らせていた思いを語るようで

胸が少し呻るように苦しく感じた。

 

 

「ごめんね、犬夜叉・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・好きよ・・・。」

 

 

 

低い声

小さい声

 

でも、確かに聞いたあんたの本心

そう思ってもいいんだよね?

 

 

 

 

 

お前がいない間・・・・

 

寂しかった・・・・

 

 

 

あんたは間違いなく強い男。

 

誰よりも力強く

誰よりも傲慢で

 

でも

 

誰よりも・・・

 

寂しがり屋で・・・

 

 

 

私を愛してくれている

 

壊してしまいたいと思ってしまうほど

私を愛してくれている

あんたの素直な心を知ったような

そんな、ある日の朔の夜の出来事。

 

 

 

 

 

 

【後書】

すみません。やってるだけでエロさも何もないかも^^;

朔の日がいつだったかをすっかり・・・(黙秘権の行使・反省)

 

でも、犬夜叉の心は誰よりもかごちゃんが一番知っている

それは絶対間違いないと

そして、犬夜叉も不器用ながらにもかごちゃんを

自分なりに愛してやまないはず。

 

そんな思いで書いてみました。

 

駄文に最後までお付き合いくださいましてありがとうございましたv

 

はなまま