■朔の夜に…             2007年12月10日

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に・・・いい・・・の?」

 

「あ?かまわねぇよ。」

 

「・・・でも・・・。」

 

「現代(あっち)で家族が待ってるんだろ?」

 

「そうだけど・・・。でも・・・。」

 

「何、気にしてんだよ?いつものお前らしくもねぇ。」

 

 

 

そういって、別れたのが夕刻。

夕日が山間にと姿を消す頃。

 

今夜は朔の夜だとも知っていた。

いつもなら・・・。

 

犬夜叉を一人にしておきたくない。

でも、今日は家族が高校合格祝をしようと約束していた。

 

犬夜叉も当然誘ったけど

でも、断わられた。

 

 

 

犬夜叉自身、やっぱり見られたくないんだよね・・・

多分・・・

私の家族にも・・・

 

人間の犬夜叉。

その姿。

 

私の家族にも・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、かごめ!今日はご馳走たくさん作ったからいっぱい食べて行ってね!」

 

「姉ちゃん、頑張ったよね!戦国時代と行き来してたのに。」

 

「まったくじゃ!毎日学校への言い訳が大変じゃったぞ。」

 

 

食卓を囲んで家族が私に笑いかけてくれる。

そういえば、すごく久しぶりな気がする。

 

こうして、家族全員が揃って食卓を囲むのは

何ヶ月ぶりかしら・・・

 

 

「犬夜叉君は来ないの?」

 

「ん?一応誘ったんだけど・・・。気を使ったんじゃない?」

 

「そう。残念ねぇ。たくさん料理作って待っていたのに・・・。」

 

「・・・うん・・・。」

 

「わしらには大事な娘を預けている家族同然でもあるんじゃがな。」

 

 

・・・じいちゃん

 

 

何気ない一言に私の胸の奥が疼く。

 

じいちゃんのその一言にもママも草太も頷いていた。

何一つ違和感なく頷いた。

 

そのまま、時間だけが過ぎ、久しぶりのご馳走と

戦国時代(あっち)での戦い以外での

野外生活や村での様子を話題に大いに盛り上がってはいた。

 

でも、結局終始胸の奥は疼いたまま。

 

 

そう思ってくれているんだね・・・

犬夜叉を家族同然と

 

思ってくれているんだよね・・・

 

 

 

ママと料理の後片付けをする。

他愛ない会話。

 

ママの匂いが隣にあると感じるのは本当に久しぶり。

優しい笑顔も本当に久しぶり。

 

草太やじいちゃんもいつものように

居間でテレビを見ながら笑っていた。

 

何気ない、本当にいつもの風景。

 

もし、私が戦国時代を知らなかったら

きっとあそこに座って、テレビを見ながら

皆で笑っていたことだと思う。

 

 

また、胸の奥が疼く。

 

ちく・・・

 

ちく・・・

 

と、何か小さな棘が突いている。

私の胸の奥で棘のように

何度も何度も突いて止まない。

 

 

「さぁ、後片付けはもういいわ、かごめ。」

 

「今日の料理、本当においしかった。」

 

「そう?」

 

「うん、だって久しぶりにママの手料理食べられたんだもん。」

 

「そう言ってくれると作った甲斐があったわね。」

 

 

ママの笑顔も本当に久しぶり。

 

なんか、変な感じ。

 

子供の頃のように

抱きつきたいような、

すがり付きたいような

甘えたい気持ち・・・

 

 

「じゃ、お風呂にでも入ってこようかな?」

 

込み上げてくる、自分の気持ちを消すかのように

どこか余所余所しくママに笑いかける。

 

ママも笑顔が

素直に受け取ることが

何故か後ろめたい

 

それでも、いつものように笑顔で私に声をかける。

 

 

「これ、犬夜叉君に持っていってあげなさい。」

 

「え?」

 

 

さっきのご馳走とは別に重箱につめられた

まだ暖かい料理。

 

きちんと風呂敷に包んである

暖かい手料理を

ママは笑顔で私に手渡す。

 

 

「ママ、これ・・・。」

 

「犬夜叉君によろしく、ね?」

 

「ママ!」

 

「さ、行きなさい。」

 

「・・・でも、今日は・・・!」

 

「言ったでしょ?犬夜叉君も家族同様、ううん、家族なんだから。」

 

「ママ・・・・!」

 

 

 

 

ママの作った暖かい料理。

心のこもった重箱を私は抱えて

いつもの服装に急いで着替える。

 

 

「ママ、ありがとう!本当にありがとう!」

 

「あ!ねえちゃん、あっちに行くんだね?」

 

「おお!向こうに行ったら皆によろしくな。」

 

 

居間のテレビから、少しだけ視線を私に向けただけで

また、さっきと変わりないように

テレビを見始める。

 

いつもと変わらない風景。

あそこに私がいても、それはきっと変わらない風景。

 

当たり前の風景がなぜか今は身に沁みる。

 

 

「さぁ、料理が冷めないうちに。」

 

「うん!ママ!」

 

「行ってらっしゃい。」

 

「行ってきます!」

 

 

嬉々とした笑顔を家族に向け

私はいつものように家を飛び出し

神社の祠へと向かう。

 

 

 

 

祝の最中には見せることの出来なかった私の笑顔。

 

 

ごめんね、ママ、草太、じいちゃん!

 

私は・・・

私の居場所は・・・!

 

骨食いの井戸を抜け、

戦国時代の月のない暗闇を私は走る。

 

 

犬夜叉!

 

犬夜叉・・・!

 

 

朔の夜。

一人で過ごすときの犬夜叉の場所を私は知っている。

 

楓ばぁちゃんの村で

朔の夜を過ごすときは

どういうわけか仲間とは一緒にいない。

 

野宿でもない限り、

彼は朔の夜を一人で過ごす。

 

 

 

・・・私と出会い、体を重ねあわすまでは

たった一人で孤独な夜を過ごしていた・・・

 

 

 

『家族でしょ?』

 

 

そう

そうよね!

 

犬夜叉は私たちと家族だもんね!

 

 

私は重箱を抱え、犬夜叉が今いるであろう

山の中の洞窟へと走り続ける。

 

朔の夜を一人で過ごすときの

彼の場所。

 

そこで何を思うのか

一人ひっそりと佇んでいるかと思うと

さっきよりも、もっともっと強く棘が胸に突き刺さる。

 

 

洞窟が見えてきた。

 

あと少し。

 

もう少し。

 

草の生い茂った獣道。

 

多分、数箇所は草で足を切ったかも知れない。

でも痛みなど、まるで感じない。

 

 

 

ただ、犬夜叉に会いたくて・・・

会いたくて・・・

 

 

 

普段、人が決して足を踏み入れない場所に

気配を感じ取った犬夜叉が

洞窟の奥から鉄砕牙を手にして

僅かながらに顔を出しているのが

見えた。

 

人間である彼。

やはり、警戒心は普段より計り知れない。

 

私は叫んだ。

 

 

「犬夜叉―――!!!」

 

「・・・かごめ?」

 

 

息を切らしながら、洞窟の入り口まで

たどり着いた。

 

 

「か、かごめ・・・。おめぇ、今夜は・・・。」

 

「犬夜叉にもご馳走持ってきたんだよ?」

 

「は?何で俺に・・・?」

 

「・・・まだあったかい・・・よ?」

 

 

手渡したときの私の手が僅かに震える。

多分、意識はしてなかったと思うけど

涙が頬を伝った感触は覚えている。

 

 

重箱を犬夜叉に手渡した瞬間。

あまりにも咄嗟で

でも、それは必然的であったかのように

私は彼の名を呼びながら抱きついていた。

 

 

「犬夜叉!犬夜叉ー!」

 

「か、かご・・・め・・・!て、おい!」

 

 

その勢いに彼を押し倒し

私は彼の冷たくなっていた唇に

何度も何度も吸い付いた。

 

 

「む・・・ん・・・・。」

 

犬夜叉の上。

その顔を見つめたいが為だけに

僅かに唇を離すと

透明な液体が彼と私を引き裂かんと言わぬばかりに

糸を引き、そしてもう一度重ね合わせる。

 

 

いつしか、犬夜叉も手にしていた重箱を

脇へと置き、私の背を強く包み込み

何度も口付けを交わす。

 

 

「犬夜叉・・・。」

 

「かごめ・・・。」

 

 

そう口火を切った私は

上着を脱ぎ捨て

自ら下着さえも放り投げた。

 

犬夜叉もただ私の名を口にするだけで

後は全てが自然に

本当に自然にと

ただの男と女となって重なり合い、

愛を肉体を以って確認し合う。

 

 

こんな自分がいたことなんて知らなかった

 

こんなに犬夜叉を求めてしまう自分が信じられなかった

 

 

肌を重ね合わせるうちに汗ばむ双方の肉体。

 

下のほうから犬夜叉が私を見つめ、

固くなった蕾ごと抱えるように

何度も何度も揉みしだく。

 

 

「あ!・・・ああん!」

 

「かごめ・・・!」

 

 

私は熱く雄雄しくそそり立った犬夜叉の自身を

そっと手に添えると、我が身の濡れそぼった中心へと誘(いざな)った。

 

 

「ねぇ・・・、いい?」

 

「・・・ああ。」

 

 

そして、自分から跨ったまま

犬夜叉の熱い杭を

静かに

そっと

そっと

沈めていく。

 

 

下半身に感じる圧迫感と温もりが

私の中へと入っていく。

 

 

「あ・・・!ああ!」

 

「・・・かご・・め・・・!」

 

 

 

 

アナタガホシカッタ

 

アナタノスベテガホシカッタ

 

 

真下から突き上げる力強い杭。

私が声を上げるたびに

どこかほくそ笑み、何かを制覇したような

誇らしげであって、

それでいて

愛おしいという思いで溢れている

この夜にしか見れない

犬夜叉の黒い瞳。

 

 

「もっと!・・・もっと強く!」

 

「か、かご・・・め!」

 

「犬夜叉ぁ!・・・・来て!もっと!」

 

「あ!・・・ぁぁ!!」

 

 

荒々しい息遣いが

洞窟の中に響き渡る交わり。

 

 

それからの記憶はあまり定かではなかったが

幾度となく突き上げる犬夜叉の激しい勢いに

私はただ翻弄されるがまま

それでも、なお求めて止まない

『女』という本能がただひたすら

『愛』の名の下

『男』を貪るかのように

何度も何度も愛しい名を叫び続け

 

そのまま、夜が明けるのを

薄れいく意識の奥で感じていた。

 

 

 

 

ママの言葉を夢の中で思い出す。

 

 

『犬夜叉君も家族でしょ?』

 

 

そう言ってくれた現代にいる私の家族。

 

犬夜叉も家族よね?

 

だから一緒に

ずっと一緒に

 

いていいんだよね・・・

 

ママ・・・

草太・・・

じいちゃん・・・

 

私は犬夜叉とずっとずっと

一緒にいたい・・・

 

 

犬夜叉の腕の中、

もう冷めてしまった料理。

 

そこに込められた

現代の家族の思いは

決して冷めることはないだろう。

 

 

私は

犬夜叉と

ずっと

一緒に

生きていきたい・・・

 

 

「もっと、もっと愛して!犬夜叉!」

 

「かごめ!離さねぇ!・・・かごめぇ!」

 

 

鬩ぎ合う

二人の交わり

 

それは時代さえをも超えた

強い絆であると

私は信じてる

 

犬夜叉と

ずっと

一緒に

生きていきたい・・・

 

 

そんな思い、

そんな覚悟。

 

これからもこんな夜が過ごせることを祈りながら

私を腕に抱きしめたまま

静かに寝息を立て寝入る

犬夜叉をそっと見つめる。

 

 

『ずっと一緒にいる』

 

 

朔の夜の二人の出来事

 

私の決意

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 

【後書】

今年最後の朔の小説となりました。

あまり『エロス』がなかったですが、締めくくり、そして最後の決戦を前に

自分の独りよがりな妄想だけで書いてしまいました。

期待された方がいらしたら本当に申し訳ありません(平謝り!)

 

いつの間にか、恒例となってしまった朔小説。

気がついた方もおられ、嬉しかったのですが

すべて、基本的にかごめちゃん視点で書いてみました。

 

拙い、そして乏しい文章能力で本当に恐縮ではありましたが

訪問し、読んでくださった方々。本当に感謝につきません。

 

平成20年2月に行われるオンリーイベントでは

オフ本を千石まりもさんと合本にて出版いたします。

 

サークル名『大楽蓮華』

大人のための大人の作品を扱っていくサークルです。

そして、こことはまた一味違う形で“大人表現”を検討しております。

 

なお、妄想夜曲のこちらとは、また別でして

扱うものも更に『愛の深遠』を求めていく予定でございます。

 

もし、『ま、見てやってもいいぞ』とお付き合いくださる方がおりましたら

是非お出でくださること期待しております。

 

 

途中から始めたとはいえ、駄文ではありましたが、

この朔小説シリーズを読んでくださった皆様

本当にありがとうございました。

 

平成19年12月10日 はなまま

 

 

 【年齢指定本 新刊情報】