■11月朔夜                      2009年11月17日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい・・・、かごめ・・・」

 

 

 

 

「なぁ・・・、かごめ・・・」

 

 

 

夜も更けた薄暗い部屋の中

犬夜叉はどこか押し殺した声で

傍らで横たわる愛しい女の名を口ずさむ

 

 

「かごめ・・・、起きろよ・・・」

「ん・・・」

「眠いのか?」

「んん・・・」

 

 

その瞼は薄く開くも視線は天を泳いでいる

 

 

「やりてぇ」

「え?」

 

 

その台詞にかごめもようやく反応らしい反応を返す

 

 

「今日は駄目よ・・・」

「なんでだよ」

「だって・・・」

 

 

いつしか覚えた甘えた声が夜の静寂を打ち破る

 

 

「してぇんだ・・・かごめ・・・」

「あ・・・や・・・、んん!」

 

 

眠りの淵にと落ちかけていた意識が

犬夜叉の口付けによって

現実へと引き戻される

 

だが、かごめの抵抗には購えない

 

 

「まだ・・・終わってないの」

「俺は気にしねぇ!」

「あたしは気にするの!!」

「・・・・・・」

 

 

黒髪の少年であるはずも

獣の耳が項垂れているのがわかるかというほどに

その表情が曇る

 

 

「わかったよ」

「犬夜叉・・・」

 

 

犬夜叉はかごめに背を向けると

小屋の奥の茣蓙の上にと寝そべった

 

(犬夜叉・・・、ごめんね・・・)

 

心の中、犬夜叉の背をみつめ

そう思ったときだった

 

 

「来いよ、かごめ」

「は?」

 

 

鋭い爪のない指先が己を手招いている

 

 

「だから、今日は・・・」

「いいから来いっての」

 

(まさか、口でしろって言う気じゃ・・・)

 

 

かごめは大きく溜息を漏らしながらも

呼ばれるまま犬夜叉の横たわる

茣蓙へと向かう

 

 

「ここ、来いよ」

「・・・・・」

 

 

そこには、かごめが頭を乗せるのを

今か今かと待ち構えている犬夜叉の逞しい腕

 

 

「あたし、今日は駄目だって・・・」

「いいから寝ろ!」

「きゃあ!」

 

 

衣服ごと掴まれ、

腕の中へと収められるかごめの華奢な肉体は

そのまま緋色の衣の中へと包み隠され

しっかりと抱き抱えられてしまった

 

 

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・犬夜叉?」

「・・・なんだ?」

「・・・これって・・・」

「寒くねぇだろ?」

「そうだけど・・・」

「じゃ、いいじゃねぇか」

「でも・・・、その・・・できない・・・よ?」

「抱いているだろうが、今こうやって」

「犬夜叉・・・」

「お前が嫌なのに無理に出来るか」

 

 

その言葉の真偽はともかく

自分を包み込むぬくもりは

決して衣だけではないことを感じずにはいられない

 

 

「犬夜叉・・・、ありがとう・・・」

「礼なんかいるか」

「だって・・・」

「終わったら、やるからな」

「・・・はい・・・」

 

 

その一言さえなければ・・・

などと思いつつ

犬夜叉の腕の中、深い眠りにとついた

今宵、朔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後書】

 

今回はエロらしいエロはありませんでしたが、こんな思いやりというか、

犬夜叉って多分こんなんだ、的な部分を感じていただけたなら^^

 

宣伝ですが、今回初めて小説をオフ本として発行いたします。

よろしければ是非・・・♪

http://mosoyakyoku.web.fc2.com/20091122-ivent-joho.html

       梶