2月の特別  ―Valentine               (2007.2.13)

 

 

 

 

 

 

 

 

2月13日。

 

 

かごめは、ものすごい形相で追いかけてくる犬夜叉を振り切って

ようやく我が家にと帰ってきた。

 

「また、例の『てすと〜』かよ!」

 

「いいじゃない!ちょっと帰るだけだもん!」

 

「俺も行く。」

 

「来ないで!」

 

なんとしてでも、かごめの帰宅を阻止する犬夜叉を振り切ったものわけがある。

 

 

そう。

明日はセント・バレンタインデー。

 

かごめとて年頃の女には違いない。

たまには、かわいらしい『彼女』のひとつくらい演じてみたいもの。

 

意を決し、骨食いの井戸に飛び込み、

家に着くや否や、夕食も忘れ、材料の買出しへと店へ駆け込んだ。

 

 

 

 

 

「準備はOKね。明日はいよいよ・・・。」

 

そういうと、かごめは何気に窓を見つめた。

 

(・・・犬夜叉、無理矢理置いてきちゃったから、きっと怒ってるだろうなぁ)

 

机の上に買い込んだギフト用の包装紙、リボン、そしてチョコレート。

 

キラキラ光る、その包み紙にかごめは目をやり、

笑みを浮かばせた。

 

「喜んでくれるかな・・・?」

 

そう溢しつつ、部屋のカーテンに手をかける。

 

今夜の月はカーテンさえ透かすほど光が強い。

 

何に想いを爆ぜるのか。

 

かごめは、その手をす・・・と左右へと開いた。

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

そして、思わず、また閉じた。

 

「・・・・・。」

 

もう一度、カーテンを開く。

 

「・・・・・!」

 

「・・・・よう。かごめ・・・。」

 

窓に張り付いた犬夜叉。

 

かごめは、目を引きつらせた。

落胆を見せた肩。

 

「い、・・・犬夜叉・・・・。」

 

だが、月が綺麗とはいえ、まだ2月。

諦めたかごめは、致し方なく、外にいた犬夜叉を引き入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ないでって言ったわよね?」

 

「・・・・・。」

 

「どうして、来たりしたのよ?」

 

「・・・・いや。・・・・その・・・・。」

 

語尾が濁る。

 

その金の眼差しは、戦国時代では決して見ることの出来ない

まるで、母親に叱られて怯える子供のよう。

 

おずおずと部屋に入り、上目遣いでかごめを見つめる。

 

「・・・怒ってんのか?」

 

「・・・・もう、いい・・・。」

 

かごめは大きく溜息を洩らしながらも、

既に諦めきったように、力なく机に手をついた。

 

「かごめ?」

 

「・・・何よ?」

 

「・・・・・。」

 

背中の後ろのほうから、犬夜叉の視線を感じる。

 

だが、机の上に並べたプレゼント用の品々・・・。

 

(そうよね、そうだよね・・・。絶対、犬夜叉は来るわよね・・・)

 

 

本当は、こっそり作って持って帰り、それとなくいい雰囲気の中で

バレンタインのチョコを渡したかった。

 

もちろん、そんな現代の風習など彼には知る由もないが、

それでも、女の子の一大イベント。

 

心ばかりのものであれ、素敵な一日を過ごせたら、

それはどんなに素晴らしいことか。

 

 

でも、自分から離れようとしない

絶対に追いかけてきてくれる彼の気持ちも無下に出来ない。

 

寧ろ、それは女冥利に尽きるものではないか。

 

かごめは諭した。

 

自分に言い聞かせた。

 

彼は、自分を大切に思っているからこそ、

こうして、どんなに「着いてくるな」と

頼み込んでも、絶対に着いてくる。

 

離れない。

離さない。

 

ある意味、それは今、身に染みて感じたかごめだった。

 

 

「・・・なぁ、かごめ?」

 

「何よ?」

 

「やっぱ、怒ってんのか?」

 

「・・・・。」

 

「なぁ・・・。」

 

「怒ってないわよ・・・。」

 

「怒ってんじゃねぇかよ。」

 

「怒ってなんかないって・・・。」

 

そういって、くるりと体を返し、真後ろにしょぼんと立ちすくむ犬夜叉を見つめた。

 

「怒ってなんかないわよ。犬夜叉。」

 

「本当・・・か?」

 

「うん。嬉しい・・・よ。こうして来てくれるのって・・・。」

 

「そうか?」

 

「うん。」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、犬夜叉は大きく目を見開き、

かごめを見つめた。

 

 

「本当に怒ってないんだな?」

 

「怒ってないってば。」

 

 

口元が緩む。

 

きっと戦国時代では見ることのない犬夜叉の綻んだ顔。

 

それを見れるだけでも自分は幸せかもしれない。

 

 

 

 

そう思いなおしたときだった。

 

 

(え?え?)

 

 

かごめの体がふわりと浮き上がる。

 

その勢いで椅子がガタッと倒れた。

 

一瞬のうちに体がベッドに沈みこむ。

 

何が起きたのか、一体なんなのか。

突然机から引き剥がされ、ベッドに真横に沈み込まれた自分。

 

宙に浮いたつま先の向こうには、さっきまで目の前にあったはずの色とりどりの包装紙。

 

 

その音に階下から、ママの声が階段伝えに響いてきた。

 

「かごめー?どうしたの?物音がしたけど?」

 

慌てて、かごめも応えを返す。

 

「な、なんでもないわ!ママ。ちょっと椅子倒しちゃっただけ。」

 

「そう。」

 

「・・・・・。」

 

 

その声は部屋の近くまできたものの、扉を開けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――ちょっと!犬夜叉!下に皆いるのよ!

 

―――――なんだよ!せっかく来たのに・・・

 

 

 

お互いの耳元。

 

小声の小競り合い。

 

 

 

だが、分はかごめが不利。

 

 

犬夜叉の小声は、耳に拭きかかり、

低く響く音が体の中心に何かを駆け巡らせる。

 

 

覆い被さる犬夜叉の顔がつい間近に迫ったかと思った瞬間。

 

唇が重なった。

 

 

深い呼吸さえ絡み合う。

 

 

 

――――― うう・・・、ん・・・・

 

――――― ・・・・・

 

 

黙ったままの犬夜叉だったが、

その手の動きは、かごめを欲する男の手となっている。

 

 

 

――――― 犬夜叉!やだってば!

 

――――― 静かにやれば気がつかねぇって

 

――――― 聞こえるわよ!

 

――――― ・・・・

 

 

必死にその体から、逃れようと身を捩るが、それは不可能。

 

硬い胸板がしっかりとかごめの体を組み敷き、手先が這う。

 

 

――――― ん・・・!

 

――――― ・・・・・

 

 

倒れた椅子をそのままに犬夜叉は絨毯へと跪き、かごめの両足を持ち上げた。

 

 

――――― や!だめだったら!

 

――――― 静かにやるって

 

 

胸元は、首までたくし上げられ、豊満な乳房が彼の目の前に晒されると、

かごめの理性も徐々に快楽の海へと落ちていくのか、

頬を桜色へと染め、生暖かい舌がその白い肌を舐め上げる動きに

小さな呻き声にもならない吐息を洩らした。

 

大きな手の平が何度となく、その乳房を弄ぶ。

 

両足を広げ、その間に割ってはいる犬夜叉の体が重く圧し掛かる。

 

 

――――― だめ!・・・声が・・・出ちゃ・・・う・・・

 

――――― ここ・・・まできて・・・やめられるかよ・・・・

 

快楽の波が押し寄せる中、それでも口から溢れてきそうな

喘ぎを堪えるかごめを見つめると、

犬夜叉は徐にその小さな手を捕らえ、自分の下半身へと押し付けた。

 

袴の上からもはっきりと自己主張する雄。

張り詰めた様子が触れた衣からでも感じ取れる。

 

 

――――― な?止められねぇ

 

――――― だって・・・。下に・・・いるのよ?・・・あ!

 

 

慣れた手付きで、するすると下半身に残された衣服を剥いでいく。

 

そのまま、膝の裏に手を掛け、大きく開かれたその中心に金の瞳が消えていく。

 

 

――――― ん!・・・ん!

 

 

花弁に沈み込んでは蠢く舌の動き。

かごめは両手で口を押さえ、声が漏れるのを自分で塞いだ。

 

 

水音が部屋にと木霊すように耳に入る。

 

時折、軋むベッド。

 

かごめは自分の口を押さえつつも何度となく首を左右へと振り、

犬夜叉の愛撫への反応を強く見せた。

 

そのかごめの反応を確かめながら、犬夜叉もまた己の腰の紐を解き、

上着だけを覗き、残る半身に纏う袴を脱ぎ捨てた。

 

 

 

 

 

押し寄せる波に身悶えるのを見据えた犬夜叉は

かごめの体を抱き上げると、

そっとその愛おしく欲して止まない体を絨毯の上へと寝かせた。

 

それでも、口元の手を離さず必死に漏れ出す声を塞ぐかごめに

犬夜叉は、そっと口付けを落とし、潤んだ瞳を見つめた。

 

 

――――― 大丈夫か?

 

左右に首を振り、目尻に滲む涙を見せる。

 

―――――  ・・・すぐ、・・・すぐ済ます・・・から

 

 

犬夜叉は、かごめの足をさらに大きく開かせると

そのまま、自分の肩へと掛け、曝け出された濡れぼそる中心へと

いきり立つ自身を宛がい、静かに埋め込むようにと差し込んだ。

 

 

―――――  ん!・・・ぁあ!

 

 

何の抵抗もなく、深くかごめの中へと沈む。

 

その感覚は犬夜叉の脳天をも強く刺激し、甘美たる夢心地へと誘う。

その甘美な夢心地のさらに奥に突き進むかのように

時には緩く、特には荒々しく進退を繰り返し、

真下で揺れ動くかごめを見つめる。

 

かごめも貫く自身の動きに何度となく身を捩り、

突き上げる悦びに溺れそうになるのを堪えるかのように

口元に宛てた手に力を込めた。

 

 

――――― ・・・・つらい・・・か?

 

――――― んん!・・・・ん!

 

 

犬夜叉は、かごめの手を避けると、激しく食らいつくように

その下に隠されていた唇に吸い付いた。

 

 

――――― ん!・・ん・・ん!

 

 

恍惚とした瞳。

 

押し寄せる快楽。

 

 

その息遣いさえもが既にかごめの限界を知る。

 

 

――――― かごめ・・・!

 

 

耳元でかごめの名を囁く。

 

かごめの下のほうでは、飲み込んだ犬夜叉自身を何度も吸い込むような

独特の締りをし始めていた。

 

犬夜叉は、かごめの手を退けると自分の手の平をその口元へと宛てた。

 

 

――――― ・・・・んん!

 

――――― 大丈夫だ・・・。俺が抑えるから・・・

 

 

そういうと、更に腰の動きを強めた。

 

解放された手が犬夜叉の背へと回され、強く抱きしめた。

 

 

真上から叩き込まれるような犬夜叉の自身。

 

かごめの体は大きく折り込まれ、膝が豊満な乳房を押し潰すかのような姿。

 

 

押さえ込まれた体に僅かに息継ぐことを許されても

犬夜叉の手はそこから動くことはなかった。

 

 

(・・・く、苦しい・・・!)

 

 

かごめの目がそう犬夜叉に訴えたとき、

犬夜叉はそれを感じ取ったのか、腰の動きを止める事もなく

耳元で呟いた。

 

 

――――― もう、・・・・すこ・・・しだから・・・

 

――――― んん!・・・・ん!

 

――――― かごめ・・・!あ!・・・はぁ!

 

 

だが、激しい進退はかごめの体の中心へと直に突き上げる。

 

 

――――― ん・・・ん!・・・・ん!

 

――――― かご・・・め!

 

――――― んん!

 

――――― 手・・・、・・・俺の・・・手噛め!

 

――――― んん!・・・・ん!

 

――――― 噛ん・・・でも・・・・いいから!・・・もう・・・すこ・・・しだか・・・ら!

 

 

激しく揺れ動く犬夜叉から出た言葉にかごめは

なんのためらいもなく、口元に宛がわれた手に思わず歯を立てた。

 

一瞬の痛みが犬夜叉の眉間に皺を寄せさせた。

 

 

――――― んん!・・・・ん!

 

――――― あ!・・・かご・・・め・・・!

 

――――― ん・・・・ん!・・・・んん!

 

――――― あ・・・・っく・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一段と激しい締め付けの後、それまで激しく動いていた犬夜叉の肩が

静かにかごめの上へと圧し掛かった。

 

それと同時に手の内側に立てた歯も静かに緩み、

かごめは、大粒の涙を溢しながら、瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月14日。

 

結局、突然の犬夜叉の来訪と、その後の・・・のため、

バレンタインのための準備は何一つ出来なかった。

 

かごめは学校に行くため、部屋に一人犬夜叉を残す。

 

 

「犬夜叉!部屋から絶対に出ないでよ?」

 

「あ?・・・ああ、わーってるって・・・。」

 

 

かごめのベッドでまどろむ犬夜叉。

 

 

「それとね・・・。」

 

「あ?」

 

「・・・せめて、服くらい、ちゃんと着ててよね・・・。」

 

 

昨夜、事を終えた後、二人とも結局そのまま寝込んでしまった。

 

が、さすがにかごめは朝早く起き、シャワーを浴びたものの

犬夜叉は上半身に襦袢を掛けた姿のまま、

ベッドで蹲るようにして眠り込んでいた。

 

幸い、掛け布団のおかげで見えはしないものの

一緒に寝ていたかごめは気が気でならない。

 

 

「いい?絶対外に出ないでよ?袴くらい、ちゃんと着てよ?」

 

そういって学校へと向かっていった。

 

 

 

 

 

夕方、早々に帰ってくると、犬夜叉の様子を伺いに部屋へと入った。

 

朝、見たきりの様子で何も変わらず。

ずっと寝ていたのだろうか。

 

(今のうちに作っちゃおうっと・・・)

 

かごめは、部屋の明かりをつけることもなく、

早速キッチンへと向かい、バレンタインの贈り物を作り始めた。

 

 

 

 

 

キッチンから漂う甘い香り。

 

今日は、家族皆、親戚のうちへと出かけ、帰りが遅いことは聞いていた。

 

 

心置きなく腕を揮える。

 

オーブンを暖め、こんがりと焼きあがる様子を見つめ、

かごめはこんな穏やかな時間を過ごせる喜びと

ようやく漕ぎ着けたバレンタインらしい雰囲気とに酔い痴れていた。

 

 

 

 

 

 

昨日、買い込んだ包装紙等々一式。

 

焼きたての今だ温もりの残るチョコレートケーキをギフト用の箱にしのばす。