HOME  -kagome-             2006.10.20

 

 

 

 

 

 

あー、やっぱ、あたしらしくないよね・・・

 

やば・・・

こんなに腫らしてちゃ、皆にばれちゃう

 

ちょっと冷やしたほうがいいかな・・・

 

 

 

 

鏡の中に映った自分の顔をじっと眺め、目尻を指で摩ってみる。

 

ちょっと、ひりひりしてて、痛いかも・・・。

 

 

 

 

 

夕べ、かごめは声を押し殺し、泣いていた。

 

 

もしかして、体中から水分が無くなるんじゃないかと思うほど。

 

溢れ出てくる涙で、随分枕を濡らした気がする。

 

 

 

「あー、これじゃ、本当に皆に顔合わせらんないや・・・。」

 

 

 

皆がまだ寝静まっている楓の小屋をそっと這い出し、

まだ薄っすらとした朝焼け前の外へと出た。

 

 

 

「・・・やっぱ、空気が違うなぁ。」

 

かごめは、タオルを片手に大きく腕を挙げ、背伸びする。

 

 

誰もいない今なら、顔を隠さなくとも平気だよね

 

きっと、今のあたし、赤パンダ

 

 

あ・・・、笑えないか

 

ひりひりしてるし、きっとひどい顔してる

 

 

 

 

 

「顔洗ってこようっと・・・。」

 

 

かごめは、楓の小屋の裏手にある湧き水のところへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かごめが実家から帰ってきて、すぐのことだった。

 

桔梗の死魂虫が見えたのが、事の発端。

 

犬夜叉の姿は既になく。

 

それは、いつものこと・・・と自分に言い聞かせ、

仲間と合流した後も笑顔で、いた。

 

 

結局、犬夜叉は夜になっても帰ってこない。

 

「待ってないと悪いかな・・・。」

 

かごめは、炉辺で火を突きながら、しばらく起きて待っていた。

 

 

――――かごめ様、休まれたほうがよいのでは?

 

――――体にひびくよ、かごめちゃん・・・

 

 

弥勒も珊瑚も、笑顔でいたかごめの心の陰りを汲んでの言葉をかけてくる。

 

「うん、ありがとう。・・・でも、もう少し起きてる。」

 

その度に、また作り笑顔。

 

 

時計の針は既に夜中の一時を回っていた。

皆、床でぐっすり寝息を立てている。

 

 

――――明後日には、こっちに帰ってくるから

 

 

そういって、実家に帰ることを怒りながら、阻んでいた犬夜叉の顔を思い出す。

さんざ、言い合いをした挙句の帰宅。

 

だが、怒っていた当の本人がいなかった。

 

(今日帰るっていってたのに、昨日になっちゃったじゃない・・・)

 

仕方なく、床に入る。

 

 

 

横になった途端、大粒の涙が、ひとつ、ふたつ、みっつ・・・・。

 

 

 

 

 

結局、寝付くこともできず、晴れ上がった目が気になりだし、

リュックから、そっと鏡を取り出し、顔を覗いていた・・・。

 

 

 

 

 

泣きすぎだよね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっから、こんなに涙って出てくるのかしら・・・?

 

 

 

 

朝一番の冷たい水を手で汲み、顔にかける。

 

(うわっ!・・・冷た〜い・・・)

 

湧き水特有の無味の匂いと味を感じる。

 

現代の水道から出てくるカルキ臭い水道水とは異なる自然の水。

 

そのうち、一すくいをとり、くくっと口に運んだ。

 

「・・・・おいしい・・・。」

 

 

 

 

あれ?・・・また?

 

 

 

 

洗ったばかりの顔につたう一筋の涙。

 

 

 

また、泣いてるの?

 

 

 

自分で泣こうと思って出てくるわけじゃないの?

もう枯れたと思っていたのに・・・

 

 

「やだ!もう一回!」

 

かごめは、再びしゃがみこみ、大げさなくらいに手に掬った水を顔にかける。

 

 

何回繰り返したことだろうか・・・

 

 

「あー、さっぱりしたー!」

 

かごめは顔を上げると、ばふっとタオルを顔に覆い、

未明の空を見上げた。

 

 

(もう・・・!でてくんな!涙!)

 

 

顔を覆ったタオルの上から、瞼の上、眼窩を押す。

 

力を入れた手に瞳の動きが瞳の動きを感じる。

 

 

 

 

(犬夜叉・・・・、会いたいよ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな朝っぱらから、何顔洗ってんだ?」

 

(え・・・?)

 

顔に覆ったタオルを取り、振り返る。

 

 

朝靄の中、緋の衣が近づいてきた。

 

 

「・・・犬夜叉?」

 

「帰ってたのか・・・。」

 

「・・・うん。」

 

 

 

いつものような会話。

 

じゃないか。

 

目、合わせないし・・・・

 

 

 

 

「おはよう、犬夜叉。」

 

「・・・・。」

 

 

その言葉って、いやみになるのかな

 

そんなに黙られちゃ、こっちまで調子狂うじゃない

 

 

「朝帰りっていうのかしら?こういうのって・・・」

 

「・・・・・。」

 

 

 

それもいやみ・・・よね

 

でも、他になんていったらいいのかしら?

 

 

 

 

「お帰り、犬夜叉。」

 

「あ、・・・お、おう。」

 

 

やっと返事した。

でも、へんなの。

 

あたしのほうがいうセリフなのに、

なんで、あたしが「お帰り」って言わなきゃなんないの?

 

 

 

 

「犬夜叉・・・。」

 

「かごめ・・・」

 

 

 

 

 

え?何?

 

 

 

 

 

犬夜叉は黙って、かごめの体を抱きしめた。

 

 

 

 

「おめぇ、こんなに体冷やして・・・。」

 

 

 

あー、そういえば、結局寝てないし、

床から出たときから、ずっとここにいたし・・・

 

朝って、意外に冷えるのかしら?

 

 

 

でも・・・

 

 

 

「あんたの体、あったかい・・・。」

 

 

「かごめ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

結局、文句のひとつも言えないんだよね

 

あんたって、いっつも、そう。

 

ずるいわよ

 

あたしばっかり、こんな思いさせて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かごめは、抱きしめられた体を腕を解き、顔を上げた。

 

 

 

「さ、帰ろう?」

 

「あ、・・・お、おう。」

 

 

 

 

 

かごめは、力なく下げていた犬夜叉の手を引き、楓の小屋へと向かう。

 

犬夜叉も、その腕に引かれ、かごめの後に続く。

 

 

 

犬夜叉の手って、結構あったかい

 

あたしの手が冷たいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

ま、どっちでもいいか

 

 

帰ってきてくれたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

END