HOME   -inuyasya-           2006.10.20

 

 

 

 

 

 

 

って、かごめのやつ、また帰んのかよ!

 

また『てすと〜』ってやつか!

 

大体、四魂の欠片、探す気あんのかよ・・・!

 

 

 

 

骨食いの井戸の淵に足を掛け、

その奥を睨みつける犬夜叉。

 

腕を組み、その表情はかなり怒りまくっている。

 

 

――――明後日には帰るから

 

 

犬夜叉が何を言おうが、何をしようがお構いなし。

その一言で結局折れた犬夜叉。

「かごめが実家に帰る」ことは、阻めない。

 

 

やがて、井戸の傍に寄りかかり、手で指を折り、

なにやら数えだす。

 

 

 

明後日って、・・・ひぃ、ふぅ、みぃ・・・

 

 

はっと我に返る犬夜叉。

 

 

(って、何で俺が指折り数えなきゃならねぇんだ・・・!)

 

 

 

そんなガラじゃねぇし、

待てないってわけじゃねぇ

 

 

口を窄め、子供じみた目でもう一度井戸の底を覗く。

 

 

「はぁぁぁ・・・・・・。」

 

深い溜息。

 

 

 

 

そうやってよぉ、

 

お前、すぐ帰るって、言ってよ

 

平気で行くんだもんなぁ

 

 

 

俺がついてくと、

『べんきょー』だの『てすと〜』とかいって

満足に話もしやしねぇ

 

挙句の果てには「邪魔」とか言い出すし・・・

 

 

そんなつもりなんて、ねぇのに

 

せっかく実家帰ってきても

満足に寝もしねぇで夜遅くまで起きてるじゃねぇか!

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

 

 

言っとくがな

おめぇを心配してるわけじゃねぇぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の知らないお前が『不安』なんだ

 

そう

俺の傍で、怒ったり、泣いたりしているほうがずっといい

 

 

お前がよく見えるから・・・・

 

 

「はぁぁぁぁぁ・・・・・・・。」

 

 

 

 

















 

森が風でさざめく。

少し淀んだ空気が半妖の犬夜叉の鼻を捕らえた。

 

「ん?・・・・この気配は・・・・・?!」

 

咄嗟に立ち上がり、顔を挙げ、気配を感じるほうを見る。

 

「あれは・・・!」

 

森の向こうに薄っすらと漂う死魂虫が目に飛び込んだ。

 

 

 

桔梗の死魂虫?!

 

桔梗か!

 

「・・・・」

 

一瞬、振り返り、井戸を見つめる。

もうすぐ、かごめが帰るはずの時間。

 

だが、死魂虫はすぐそこにいる。

 

犬夜叉は、顔を戻すと、その方向へと駆け出した。

 

 

(かごめ!・・・・すまねぇ!)

 

 

後ろ髪が引かれる。

だが、桔梗がすぐそこまで来ていて、

行かなくてはいけない自分もいる。

 

 

森の木々、枝を飛び、大きく跳躍する。

 

「桔梗・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たいした話をしたわけではなかった。

 

奈落の手がかりや、その手下の動向など、

それは、どこか事務的にさえ感じる。

 

そして、最後に必ず聞く。

 

―――――ひとりで大丈夫か?

 

―――――お前は、もう戦うな

 

 

だが、彼女は決して表情を変えることはない。

 

「奈落を倒す」

 

その使命感にのみ、生きている。

 

その魂は、その一念にのみ反応し、骨と墓土の体を動かす。

 

人とは違う冷たい体を抱くことはない。

桔梗のその目が何かを拒む。

 

出会ったころであったなら、躊躇はなかった。

間違いなく、その体を抱きしめたことだろう。

 

だが、今は彼女の視線が犬夜叉の腕の動きを止める。

 

「もう仲間のところへ行け。」

 

「桔梗・・・。」

 

空振りする犬夜叉の項垂れた手。

 

死魂虫をつれ、霞のように森の奥へと消えていく桔梗。

 

「桔梗・・・。」

 

その言葉は、もう届かない。

 

結局、何一つ触れることもなく別れる二人。

 

 

 

「・・・・・。」

 

桔梗が姿を消した後も、犬夜叉は暫くそこに留まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば、もう東の空が明るくなってきていた。

 

もうすぐ夜明け。

 

 

犬夜叉は、楓の小屋へと足を向け、走り始めた。

 

かごめが帰ると約束した日は、とうに過ぎている。

走り続けた間、ただ、かごめのことだけを考えていた。

 

「かごめ・・・!」

 

かごめの名を反芻し、様々な思いが駆け巡る。

 

 

――――――帰ってきているか?

 

――――――俺を待っていてくれてるか?

 

 

「・・・・・。」

 

 

 

わかってはいるさ

 

それがお前を傷つけていることは・・・・

 

 

 

けど、こればっかりはどうしようもない

 

俺のせいで桔梗は死んだ

 

未だ、成仏できねぇで彷徨っているんだ

 

 

 

 

 

 

 

しかも、一人で奈落と戦っているんだ

 

俺がいかねぇで誰が行く?

 

 

 

 

(かごめ・・・!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、夜明けか・・・

 

かごめのやつ、帰ってきてんのかな・・・

 

 

(ん?・・・あれは・・・・?)

 

 

朝靄の向こう。

湧き水があるほうから聞こえる水音。

 

そこに見えてくる、一人の後姿。

 

(・・・かごめ?)

 

 

こんな朝っぱらから、何やってんだ?

 

 

そこには、自分の恋焦がれた一人の少女が見えてくる。

タオルで顔を覆い、なぜか顔を上へと上げ、手を当てている、その姿。

 

 

・・・・顔洗ってんのか?

 

どうして、こんな早くに・・・?

 

 

 

静かに、そこへと歩み寄った。

 

 

「こんな朝っぱらから、何、顔洗ってんだ?」

 

 

その声に驚き、タオルを取り払い、犬夜叉を見つめるかごめ。

 

「・・・犬夜叉?」

 

驚き、見開いた瞳が妙に眼につく。

 

 

 

 

・・・・泣いて・・たのか?

 

 

目が真っ赤だ

 

それなのに、どうして、そんなにまっすぐに俺を見れるんだ?

 

悪いのは、俺なのに・・・

 

 

 

目ぇ、見れねぇじゃねぇか

俺のほうが・・・

 

 

 

 

 

「帰ってたのか・・・。」

 

「・・・うん。」

 

 

 

 

やっぱ、怒ってんのか?

 

怒ってんだろうな

 

 

 

 

「おはよう、犬夜叉。」

 

「・・・・。」

 

 

 

何にも言えねぇよ

 

 

 

 

「朝帰りっていうのかしら?こういうのって・・・」

 

「・・・・・。」

 

 

 

やっぱ、怒ってんじゃねぇか

 

 

 

 

「お帰り、犬夜叉。」

 

 

 

 

 

・・・・・!

 

おめぇにやな思いさせちまったのに、

そんな風に言ってくれんのか?

 

俺にお帰りって

言ってくれるのか?

 

 

 

 

 

「あ、・・・お、おう。」

 

 

 

 

お前って奴は・・・

 

 

 

「犬夜叉・・・。」

 

「かごめ・・・」

 

 

 

何があっても、どんなことがあっても

俺はおめぇをはなさねぇ・・・

 

お前が俺を見ていてくれるんなら、

俺は・・・

 

 

 

 

 

 

 

犬夜叉は黙って、かごめの体を抱きしめた。

 

 

 

こんなにちっけー、華奢な体して、

 

冷たくなってるじゃねぇか

 

お前の体

 

 

 

 

「おめぇ、こんなに体冷やして・・・。」

 

 

ずっと起きて待っててたのか?

俺の帰りを・・・

 

 

 

「あんたの体、あったかい・・・。」

 

 

 

おめぇのほうがあったけぇよ

 

俺ん中まで

沁みてきそうだ

 

 

「かごめ・・・。」

 

 

 

俺ん中、

お前だけで一杯だ

 

 

 

 

 

犬夜叉の体を押すように体を引き離し、その黒い瞳が顔を見上げた。

 

 

 

 

 

 

「さ、帰ろう?」

 

「あ、・・・お、おう。」

 

 

 

 

犬夜叉は、為すがまま、かごめに手を引かれ、楓の小屋へと向かう。

 

かごめは、当たり前のように犬夜叉の手を引き、歩いていく。

 

 

 

 

お前、手ぇ、つめてぇ

 

俺がそうさせたのか?

 

 

 

 

 

もっと抱いていてぇけど

そしたら、お前怒るかな?

 

 

 

 

ま、どっちでもいいか

 

 

取りあえず、「お帰り」っていってくれたし・・・

 

 

今は、それで充分だろう

俺は。

 

 

 

 

 

 

 

END