more so ・・・     4       2006105

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。」

 

 

「・・・・・・」

 

 

「どけっての。」

 

 

「・・・・・・」

 

 

「おい!こら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶあ?」

 

 

「『ぶあ?』じゃねえよ。俺の着物で寝るな。」

 

 

「ぶぁぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・切るぞ?」

 

 

カチ・・・・

 

 

鉄砕牙の刃がきらりと覗く。

 

 

「ぶあぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ!・・・ったく。」

 

 

 

緋の衣から、もそっと『ぶよ』が這い出てきた。

 

ゆっくりと犬夜叉の顔を見ると、大きく口を開け、

ドアの向こうへ、のそのそと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「人の着物をなんだと思ってるんだ・・・。」

 

 

犬夜叉は、床に置かれていた衣に手を通し、

ドアのほうを睨み付けた。

 

「おめぇの寝巻きじゃねぇんだよ!」

 

 

 

けっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くあぁ〜〜〜〜〜〜・・・、あふ・・・。」

 

 

いつものいでたちへと姿を変えると、

開け放たれていた窓の前へと

大きく欠伸をしながら、歩み寄った。

 

 

(かごめのやつ、いつ帰ってきやがるんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の向こうに目を向ける。

 

窓から見上げた空は、向こうで見るそれよりも

四角く区切られたせいか、

狭苦しく見え、今一心地よさを感じない。

 

 

 

(つまんねぇ・・・)

 

 

一人の時間を過ごすには、あまりにも広いかごめの部屋。

 

 

 

(昼寝でもしてるか・・・)

 

 

 

 

いつものようにベッドに横たわり、

腕を頭の後ろで組み、目を閉じた。

 

 

(かごめ・・・、早く帰ってこいよ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めるまでは、それはそれは、至福の時間を過ごしていた。

 

 

夕べ、あの後、気を失うように寝付いたかごめを腕に、

自分の中で一晩中抱きしめていた。

 

 

柔らかいかごめの白い肌をぴったりと自分に寄せる。

 

 

 

 

少し、汗ばんだしっとりとした肌。

 

その張りと肌理の細かい絹のような肌触り。

 

髪の毛から漂う甘い香り。

 

 

 

どれもかしこも、全ては自分だけのものだった。

 

 

 

 

 

 

頭の中で思い返すは、かごめの喘いだ声と潤んだ瞳。

 

 

 

 

 

『・・・あ!・・・お願い・・・!きて・・・!』

 

 

 

耳に残るかごめの艶かしい声。

 

 

 

 

 

もっと、もっとお前が欲しい・・・!

 

 

じんわりと熱を帯びてくる自分の腰元。

 

 

(かごめ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その目覚めは、かごめの頭が動いたときだった。

 

「ぅぅぅ・・・ん。」

 

軽く首を動かし、開いたその瞳が一瞬、

はたっと犬夜叉の金の瞳と合い、暫く黙ったまま見詰め合っていた。

 

 

「・・・・・。」

 

「目ぇ、覚めたか?」

 

「・・・・。」

 

 

かごめの視線がゆっくりと下のほうへと向けられた。

 

 

「・・・・・。」

 

 

いつの間に眠り込んだのか。

 

気がつけば、犬夜叉の腕の中にしっかりと抱き抱えられ、

はたまた腕枕でぐっすりと深い眠りについていたかごめ。

 

タオルケットが体に掛けられてはいた。

 

だが、それ以上に妙に暖かい・・・人肌。

 

 

「・・・・・。」

 

「かごめ?・・・どうした?」

 

「あれ!あたし・・・!」

 

 

いきなり、飛び起きると自分のほうへとタオルケットを引き寄せ、

胸元でぎゅっと抱え込んだ。

 

「なんだよ!いきなり・・・。」

 

そういいながら、身を起こし、かごめの顔を覗きこむ。

 

するりと接がされたタオルケットが犬夜叉の体を覆っていた分まで

かごめのほうへと引き寄せられ、目の前にその姿が晒された。

 

 

「・・・・!!」

 

「なんなんだよ?」

 

 

そのまま、胡坐を掻き、目を見開いて唖然としているかごめを見やる。

 

 

 

(なんだ?・・・怒ってんのか?)

 

 

 

「おい?かごめ?」

 

 

 

(夕べ、無理矢理・・・、した・・・ことか?)

 

 

 

「・・・・。」

 

 

 

(そんなに・・・、嫌だった・・・か?)

 

 

 

恐る恐るかごめの顔を覗きこむ。

 

 

 

「かごめ・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーーーーーーーー!」

 

 

「なっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かごめの叫び声を耳元で聞いた犬夜叉は驚いて、

そのままベッドから落ちた。

 

 

 

「ちょっ!・・・な、な、なんて・・・!」

 

 

かごめはタオルケットで体を覆い隠し、

素っ裸で床に叩き落ちた犬夜叉を見下ろした・・・・、が。

 

 

 

 

日のあたる明るい部屋で普段身に纏っていたはずの緋の衣を着ていない。

 

犬夜叉の裸体を目の当たりに思いっきり驚いたかごめは、

開いた口がふさがらない様子でただ唖然とするばかり・・・。

 

 

「いてぇ・・・。」

 

 

 

 

犬夜叉は落ちた拍子にしたたかに頭を床に打ち付けたのか、

ぶつけた場所をさすりながらもベッドへ戻ろうと足を掛けた。

 

 

だが、かごめは真っ赤に顔を染め、その姿さえ正視できないのか、

ぎゅっと目を固く閉じ、手元のタオルケットをなおのこと

強く握り締め、叫んだ。

 

 

「ちょっと!服着てよ!!!」

 

 

「なんでぇ、今更・・・。」

 

 

(って、何を怒っていやがるんだ?)

 

 

「なんでもかんでもないの!早く着てよ!」

 

 

(・・・・?)

 

 

壁まで、体を引き、必死に叫ぶかごめに

裸のまま、小首を傾げ、にじり寄る犬夜叉。

 

 

膝をつき、ギシッとベッドを軋ませながら、

かごめが身を構える正面へと体を寄せる。

 

 

「なぁ、かごめ?」

 

「こないで!見ないでよ!」

 

「かごめってば。」

 

「いや!」

 

 

 

その様子に犬夜叉は小さく溜息を洩らすと、

すっと腕を伸ばし、怯える様に身を固めたかごめを

そっと抱きしめた。

 

 

「お前、今更なに言っていやがる?」

 

「何よ!」

 

 

 

 

 

 

犬夜叉は、かごめの顎に手を掛け、自分のほうへと向けた。

 

固く閉じた瞼の上にそっと唇をあてる。

 

「・・・・・。」

 

 

力んでいた肩がすっと落ちていくのがわかった。

 

微かに震えていた体も落ち着きを取り戻したのか、

手元で握り締めた拳がふっと緩む。

 

 

犬夜叉は添えた手をそのままに、今度はかごめの唇に

自分の口を寄せ、僅かに舌を入れ、きゅっと吸い付いた。

 

 

「ん・・・。」

 

 

その行為にかごめは、うっすらと瞳を開け、

ようやく犬夜叉の真剣な眼差しを見つめ返した。

 

 

「・・・なんだよ?」

 

「・・・だって・・・。」

 

「お前、その・・・・怒ってるのか?」

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

じっと見つめる犬夜叉を他所に、

かごめは、夕べの情事の一部始終を思い返した。

 

犬夜叉にさんざ焦らされた挙句、

自分じゃないようなことを言ったような・・・言わされたような・・・。

 

だが、当の言わせた本人、犬夜叉は何事もなかったかのように、

いつもの優しい瞳で自分を見つめている。

 

まして、その腕の中でお互い裸のまま、一晩中抱いて寝ていたなんて・・・!

 

 

 

「やだ!恥ずかしい・・・!」

 

かごめは顔をタオルケットで覆い、犬夜叉の懐へと体を埋めた。

 

「おい、何言ってんだよ。」

 

 

(夕べのこと怒ってるんじゃねぇのか?)

 

 

「かごめ?」

 

 

//////!」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

腕の中で抱きしめたかごめの顔が赤くなって、

更に熱っぽく火照ってきているのが腕に伝わる。

 

 

(・・・無理矢理したこと、怒ってるわけじゃねぇのか・・・)

 

 

心なしか安堵する犬夜叉。

 

 

夕べ、かごめが入りたいと言われ、連れて行った『風呂』での・・・。

 

そこで見たかごめの体につい、

無理矢理、事に運んだ自分に聊か後悔の念がなかったわけでもなかった。

 

 

 

 

 

欲しい!

 

その欲求だけが先走り、かごめの体に噛み付いた・・・。

 

だが、腕の中で耳まで真っ赤に染まっているかごめを見ていると

どうやら、それは違うらしい。

 

そう。

怒ってるわけでも、泣いているわけでもなく。

 

ただ「恥ずかしがって」いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、かごめ?」

 

腕の中から、そっと引き剥がし、肩を掴み、

かごめを正面から見据え見つめる。

 

「俺はお前が欲しいだけだ。」

 

「・・・・?」

 

「恥ずかしい、とか、なんとか、そういうのってよくわかんねぇけど・・・。」

 

「犬夜叉・・・?」

 

かごめは上目遣いに犬夜叉を見つめた。

その瞳にはうっすらと涙さえ滲んでいる。

 

「だって、・・・あんなこと・・・。」

 

「なんだよ?あんなことって・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「お互いがいいなら、それでいいじゃねぇか?」

 

「・・・・・。」

 

「お前に拒まれるほうが俺には辛い・・・。」

 

「犬夜叉・・・。」

 

 

 

そっと頭ごと抱え、かごめの体を再び抱きしめた。

 

 

「お前がいいんだ・・・。」

 

「でも・・・。」

 

「お前だけだ・・・。」

 

 

もう一度、唇を重ねた。

軽く唇を舐めるかのように、上と下とを甘噛みすると、

くっと舌を入れ、中を吸い出し始める。

 

 

「んんん・・・。」

 

 

犬夜叉は、黙って胸まで引き上げたタオルケットを下げ、

露となった乳房の突起を掌の指と指の間でそっと摘んだ。

 

 

(あっ・・・・)

 

 

すっと眉間に皺を寄せ、身構えたかごめ。

 

 

犬夜叉は静かに頭を下げ、もう片方の先端を口に含んだ。

 

 

「あ・・・、犬夜叉・・・。」

 

「いいだろ?」

 

指を動かし、突起を固く摘み上げると、

それに合わせてかごめも吐息を洩らし始めた。

 

 

 

 

ゆっくりと体を倒していく犬夜叉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりとベッドへ沈み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・また、・・・するのかな・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かごめは、犬夜叉の手に為すがままに、

ただ天井を見つめていた。

 

 

 

 

(もう明るいのに・・・)

 

 

 

恥ずかしさは、いつしかどこかへといったものの、

何故、こんな明るい時間から、行為に及んでいるのか・・・。

 

 

犬夜叉は、ひたすらかごめの胸にしがみ付き、

心地よい柔らかさに浸り、貪っている。

 

 

 

視界の下のほうでは、太陽の光を反射した

光り輝く銀の髪が体の上を這いずり回り、

じっくりとかごめの肢体を味わいつくしていた。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

反応がない

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

じっと体を委ねながらも、あの悩ましい声ひとつ上げてこない

かごめへと顔を上げた。

 

 

「・・・どこ見てんだよ?」

 

頬に手を添え、自分へと向ける。

 

 

「・・・え?・・・・あ、いや・・・。」

 

 

添えた手をそのままに、もう片方の手は胸元の突起を転がす。

 

 

「つまんねぇか?」

 

 

「・・・そうじゃなくて・・・、・・・・っ!」

 

 

応えを待たずして、軽く力を入れ、つまみ上げる指。

 

 

「・・・余所見なんてしてんなよ・・・。」

 

 

「・・・・うん。」

 

 

 

だが、その明るさが気になり、ベッドサイドに置かれた時計へと

そっと視線を移した。

 

 

 

小さな音が時を刻む方向。

 

 

チッチッチッチ・・・

 

 

(・・・・そうか、もう二時かぁ・・・)

 

 

明るいはずだわ・・・

 

 

どことなく納得したのか、犬夜叉の頭に手を乗せ、

再び天井へと顔を上げた。

 

 

(二時・・・か・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

え?・・・二時?

 

 

 

 

 

 

 

 

「二時――――!!!!」

 

 

 

がばっと身を起こし、犬夜叉の体を退け、時計を掴み叫ぶかごめ。

 

 

 

いきなり、体を退けられ、唖然とかごめの姿を見つめた犬夜叉。

 

 

 

「な、なんだよ!いきなり起きて・・・。」

 

 

気分よく、かごめの体を味わっていた犬夜叉は、

突然のかごめの行動に虚をつかれたように目を見開いた。

 

 

「やだ!もう二時じゃない!」

 

「にじ?」

 

 

 

(どっかで虹でも見えたのか?・・・んなもんねえぞ?)

 

 

 

時計を抱え、驚くかごめから視線を外し、

窓の外へと顔を向ける。

 

 

 

「虹なんてねぇぞ?」

 

「違うわよ!時間よ、時間!」

 

「なんの時間だよ。」

 

「買出し行かないと遅くなっちゃう!」

 

 

 

かごめは、さっとベッドから立ち上がると、

クローゼットから、簡単に服を選び出し、

着替え始めた。

 

 

その慌てふためく様子をただ眺めるばかりの犬夜叉。

 

 

「・・・かごめ?」

 

「やだ!時間遅くなる!」

 

「おい!」

 

「早く行かなきゃ・・・!」

 

 

手っ取り早くノースリーブのワンピースを着込む。

 

 

「ああ、もう!」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

裸のまま、ベッドの上で、着替えるかごめを黙って見つめるばかり・・・。

 

 

やがて、支度を終えると、犬夜叉のほうへと振り返り、

「いいこと?犬夜叉?」と腰に手を当て、

きっと睨み付けた。

 

 

「あたしが帰ってくるまで、ずえったい、外に出ないでよ。」

 

 

その剣幕に押される犬夜叉は、その眼差しに軽く身を引く。

 

 

「いい?・・・ずえったいよ!」

 

「・・・おぅ。」

 

 

 

犬夜叉の小さいながらも、応という返事を聞きだすと、

颯爽と部屋を飛び出していった。

 

 

 

 

 

ガラガラガラ・・・・、

 

 

ピシャ。

 

 

 

 

玄関を開け、鍵を閉める音が閉め損ねたドアの向こう側から聞こえてくる。

 

 

 

 

両手をベッドに後ろ側へとついたまま、腰を下ろし、

勢いよく去っていっためごめの後姿を見送る犬夜叉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい・・・?俺はどうすんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、いつまで待たせるんだよ!」

 

 

居間で寝転び、足元でじゃれてくる『ぶよ』を軽く蹴る。

 

 

「ぶああああ。」

 

 

「・・・・・。」

 

 

ちょいっとぶよの柔らかいお腹を踵でつつく。

 

 

「・・・ぶあぁ・・・。」

 

 

(いつんなったら、帰ってくんだよ・・・)

 

 

「ぶああああ・・・。」

 

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜!犬夜叉ぁ?」

 

玄関先から、ようやく待ち望んだかごめの声が聞こえていた。

 

犬夜叉は、足でぶよを払い除けると、

すくっと立ち上がり、廊下へとかごめを向かい出た。

 

 

 

 

「おせーじゃねぁか!」

 

「ごめんね。買い物がいろいろあって・・・。」

 

 

ふうっと息をつきながら、両手一杯に買い物袋を下げ抱え、

犬夜叉を見つめ、笑顔で応えた。

 

 

 

「なんだよ、そんなに抱えて?」

 

「ああ、これ?戦国時代【むこう】に持っていくのに、ね。」

 

 

黙って、かごめの手から荷物を取り、

居間へと運び込んだ。

 

 

 

 

 

「あー、重かったぁ。」

 

座布団に腰掛け、一息つく。

 

「ちゃんと待っててくれたんだ?」

 

「・・・・・・。」

 

 

犬夜叉は、黙ってテーブルを挟んだかごめの正面で、どかっと腰を下ろした。

 

どこか、照れていそうに袖の中で腕組をしながら、そっぽ向いた犬夜叉。

 

 

 

かごめは、その様子を見つめながら、言った。

 

 

「ごめんね。慌てて出て行って・・・。」

 

「・・・・・。」

 

 

テーブルに身を乗り出し、正面で不貞腐れている犬夜叉の顔を覗き込む。

 

 

「ねぇ?犬夜叉?」

 

「・・・待ってたんだぞ。」

 

「ごめんってば。・・・おいしいご飯作るから、ね?犬夜叉。」

 

「・・・・・。」

 

 

くいっと傾く耳の動きをかごめは見逃さなかった。

 

 

確かにあの雰囲気の中、犬夜叉の想い溢れた行為もそこそこに

いきなり飛び出していったことは、

少々冷たい仕打ちだったかもしれない。

 

 

 

 

 

ちょっと、かわいそうなことしちゃったかな・・・?

 

でも、あの調子じゃ、またしそうだったし・・・

 

 

 

「おいしいご飯作るから、ゆっくりしてて?ね?」

 

 

「おう・・・。」

 

 

 

 

かごめは、にこっと微笑むと居間に一人犬夜叉を置いて、

鼻歌を鳴らし、キッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありきたりの料理ではあったが、

戦国時代【むこう】ではありえない、それなりに華やかなテーブルではあった。

 

 

普段、口にしない料理を頬張り、「これ、うめぇ!」と、

まるで、子供のように箸を抱え、口にしてくれる犬夜叉の様子を見て、

かごめは、喜んで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、夕飯を食べ終わると、再び二人は居間へと戻った。

 

 

「はい、お茶入ったわよ。」

 

「おう。」

 

 

かごめは、お約束のようにお茶を犬夜叉へと差し出す。

 

 

 

 

 

それでも、しん・・・と静まり返った人気の少ない部屋は

二人を包み込む空気さえ妙に重々しく感じた。

 

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「テレビでも見ようか?」

 

「あ?なんだ、それ。」

 

 

パチ

 

 

―――――今夜のゲストは、・・・・・

 

 

(最近の曲ってよくわかんないのよね・・・)

 

 

パチ

 

 

―――――今夜のニュースは・・・・・

 

 

(ニュース観てたってなぁ・・・)

 

 

 

 

かごめは、手に持つリモコンであちらこちらへとチャンネルを変える。

犬夜叉は、画面に映し出される映像を不思議そうに黙って覗き込んでいた。

 

 

(そりゃ、犬夜叉には珍しいかも)

 

 

パチ

 

 

「・・・・・・!」

 

「・・ぶっ!」

 

 

 

 

 

 

 

その映像に二人は、思わず目が釘付けとなった。

 

かごめは口に含んでいたお茶を噴出した。

 

 

 

―――――今夜は寝かさないぜ・・・

 

 

―――――ああああ!・・・・・

 

 

 

 

「なんだ!・・・箱ん中で・・・!」

 

「あ、いや、あれは番組!・・・ドラマよ!」

 

「どら・・・?」

 

 

かごめは慌ててテレビを切り、立ち上がると、

「お風呂でも入ってこようかな!」

と話を切ろうと誤魔化した。

 

 

 

 

だが、これも墓穴。

 

 

 

「風呂?」

 

 

(しまった!)

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

犬夜叉は、立ち上がったかごめをじっと見つめた。

 

その視線を背に、地雷を踏んだかのように立ち止まったかごめ。

 

 

「『風呂』に入ってくんのか?」

 

「・・・え?・・・あ・・・。」

 

「入ってくんのか?」

 

 

もう一度聞き返す。

 

 

(まさか、昨日みたいなこと考えているんじゃないでしょうね・・・)

 

 

しばしの沈黙。

 

その声に恐る恐る振り返る。

 

 

「入ってくるけど・・・、何?」

 

「かごめ。」

 

「ん?」

 

「・・・何?犬夜叉。」

 

「・・・・・。」

 

「何?」

 

「・・・部屋行ってる。」

 

 

 

 

ほっ・・・・

 

 

 

(よかった・・・。まさか、また一緒にって言われたらどうしようかと思った・・・)

 

 

かごめは、二階に犬夜叉が上がっていくのを確認すると、

早々に済ませようと、いそいそと浴室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋は案の定、電気もつけず、真っ暗のままであった。

 

パジャマに着替え、バスタオルで濡れた髪を拭いながら、

部屋の中を見回す。

 

だが、犬夜叉の姿はどこにも見当たらない。

 

 

「犬夜叉?」

 

 

その応えは返ってこない。

 

 

「?」

 

 

かごめは、開いてカーテンの靡く窓へと向かった。

 

 

「犬夜叉?どこにいるの?」

 

 

かごめは、窓から少し身を乗り出し、外へと顔を覗かせた。

 

 

「かごめ。」

 

「え?」

 

 

見上げると、真っ逆さまにぶら下がるように窓枠から犬夜叉が顔を出した。

 

 

じっとかごめを見つめると、さっと身を翻し、部屋へと入ってきた。

 

 

「何してたの?」

 

「いや、別に・・・。」

 

「ふ・・・ん。」

 

 

犬夜叉は、黙ってベッドへと上がりこみ、いつものように胡坐を掻いた。

 

 

かごめは、どこへ座ろうかと、ふと回りを見渡すと、

勉強机の椅子に気がつき、腰掛けた。

 

 

「ねぇ、犬夜叉?」

 

「なんでぇ?」

 

「一人で待ってて疲れちゃった?」

 

「・・・いや、暇だった。」

 

「そう。」

 

 

犬夜叉は、腰に差した鉄砕牙を抜き、脇へと立てる。

 

 

「かごめ・・・。」

 

「何?」

 

「来いよ・・・。」

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を拒む理由はなかった。

 

初めての日から、これで何回目となるだろうか。

その体に自分を重ねるのは。

 

回を追うごとに、いつしか当たり前のように吸い寄せられる、お互いの体。

 

始めは、戸惑いと恥じらいが、その行動に歯止めをかけていた。

 

 

「かごめ・・・。」

 

 

その声に呼ばれ、傅き、身を寄せていく自分が信じられなかった。

 

 

 

 

 

カタっと椅子の動く音。

 

かごめは、黙って犬夜叉の掻いた胡坐の上へと跨り乗った。

 

 

かごめは、犬夜叉の肩に手をつき、眼下の銀の髪ごと胸に抱きしめた。

 

犬夜叉も折れそうなほどにか細いかごめの腰に手を回し、力を込める。

 

 

かごめは、腕の中で恍惚な表情を浮かべた犬夜叉の顔を覗きこんで微笑む。

 

 

顔に当たる柔らかい胸の感触。

微かに残る石鹸の香り。

 

 

「かごめ・・・。」

 

「ん?」

 

「いやか?」

 

「何を・・・?」

 

「こんなにしたがる俺はいやか?」

 

 

言葉にはしなかった。

 

かごめは、犬夜叉の頬に手を添え、黙って犬夜叉の唇に自分の唇を重ねた。

 

 

そのまま、かごめの体を支え、ゆっくりとベッドへと横たえた。

 

重ねた唇を離すことなく、昨日覚えたてのボタンの外しをひとつひとつしていく。

 

 

 

外し終え、開いた布から、そっと手をいれ、至上の感触を味わう。

 

 

大きく丸みを帯びた柔らかい乳房と固く尖った先端を掌で感じ取る。

 

 

「いや、か?」

 

暗闇の中で金の眼差しが揺れる。

黒い瞳も同じように潤み、僅かに光を反射し輝かす。

 

 

「ううん。・・・いいよ。」

 

 

肩から、するりと腕を引き抜く。

露になっていく上半身。

 

かごめもまた、犬夜叉の衣に手を掛ける。

前の合わせを開き、がっしりとした肩まで手を差し込んだ。

 

襟に言霊の念珠が当たり、じゃら・・・と音を立てながら、

袖から、腕を出す。

 

 

 

 

 

「・・・犬夜叉の体って、固いよね。」

 

「お前の体はやわらけぇ・・・。」

 

 

かごめは、ふっと笑みを浮かべた。

その笑みに応えるように犬夜叉も口の端を少し上げる。

 

 

「お前が欲しい・・・。」

 

「犬夜叉・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

再び、激しくお互いの唇を貪りあい、交わり重なっていく。

 

自分たち以外誰もその夜伽に水を差すものはなし。

ただ、激しく愛し合い、交わりあう。

 

回を追うごとにその秘め事は密度を増し、

深い快楽の湖に身を落とし込む。

 

 

 

 

何度求めても、それは麻薬のように病み付きになって

更に二人の想いを強く引き寄せて止まない。

 

 

 

 

 

 

 

明日には、家族たちも旅行から帰ってくる。

自分たちも戦国時代に戻らねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かごめ・・・!」

 

 

「・・・犬夜叉・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もっと、もっとお前が欲しい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬩ぎあい、交わる二人。

 

止め処ない思いの他は何一つない、本能の赴くままに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、弥勒。」

 

「なんですか?七宝。」

 

「犬夜叉はいつ帰ってくるんじゃ?」

 

「さぁ、わかりません。」

 

「イライラが直っとるといいのう・・・。」

 

「それは大丈夫でしょう。・・・多分。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

End