more so ・・・     3       2006105

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか汗掻いたせいか、お風呂に入りたい・・・。」

 

「あ?風呂?」

 

 

 

つい今しがたまで激しい愛の行為を営み、

犬夜叉の腕枕の中で、後の余韻に浸っていた

かごめが頭を擡げ、そっと金の瞳を覗きこんだ。

 

 

「暑いし、一杯汗掻いたし・・・。」

 

「俺はなんともねぇぞ。」

 

「・・・そりゃ、あんたは、ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとシャワー浴びてくる。」

 

「しゃ・・・?なんでぇ、それ。」

 

「・・・『お風呂』入ってくる。」

 

 

 

また訳わかんねぇ言葉を使いやがる・・・

 

 

 

 

自分の腕から顔を擡げ、上半身を起こし、

立ち上がろうとするかごめの背を黙って見つめた。

 

 

 

「ちょっと行ってくる。」

 

「・・・・・」

 

 

ベッドから足を下ろし、立ち上がろうとした途端。

 

 

「きゃ・・・!」

 

「かごめ!あぶねぇ!」

 

 

 

咄嗟に腕を伸ばし、倒れかけたかごめの体を支えた。

 

幸い、転ぶことはなかったものの、

立ち上がろうにも腰が上がらないのか、

かごめは、べたっとベッドに腰を落としてしまった。

 

 

 

「・・・・。」

 

「立ち上がれねぇんだろ?」

 

「・・・・なんか、腰から下が力入んない。」

 

 

 

犬夜叉は、身を起こし、ベッドに腰掛けたかごめの背中を見つめ、

ふうっと溜息ひとつ漏らした。

 

 

 

「ったく、しょうがねぇなぁ。」

 

「何よ。」

 

「風呂に連れてってやるよ。」

 

「は?」

 

 

 

そういうと、犬夜叉はかごめの背と膝の下に腕を入れ、

抱き上げ、さも当たり前のようにドアのほうへを足を向けた。

 

 

 

「や!・・・いいわよ!自分で行くから!」

 

「なんだよ?歩けねんだろ?」

 

「いいってば!」

 

 

犬夜叉は、腕の中から逃れようと必死に身を捩るかごめに目をやった。

 

 

 

足腰たてねぇのに、何抵抗してやがる?

わかんねぇ・・・

 

 

 

「本当にいいから!」

 

「・・・・・」

 

「歩ける!」

 

「うそつけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

腕の中でもぞもぞと抵抗するかごめを見つめる。

 

 

(いいだしたら、聞かねぇんだから・・・!)

 

 

 

 

捕まれた犬夜叉の腕から這い出そうと身を捩る。

 

 

(いいだしたら、聞かないんだから・・・!)

 

 

 

 

 

しかし、立てないかごめと抱き上げる犬夜叉との優勢は明らか。

金の眼をきっと据え、かごめをきっと睨んだ。

 

 

 

「こっから、降りることもできねぇで何が歩けるだと?」

 

「〜〜〜〜〜!」

 

 

止めの一言。

 

 

かごめは諦め、素直に犬夜叉に抱き抱えられ、

風呂場まで連れて行って貰う事にしぶしぶ承知した。

 

 

 

「ところで、かごめ。」

 

「何よ。」

 

ちょっと恥ずかしさを押し隠した眼差し。

 

「『でんき』ってな、どうすればいいんだ?」

 

 

 

ドアを開けると、階段はおろか一階までが真っ暗。

 

つい、いつもの習慣で連れて上げられる途中で行く先々の電気を

犬夜叉の肩の上から手を伸ばし、スイッチを切ってまわっていたのだ。

 

 

 

「あー、それはね・・・。」

 

 

カチッ

 

 

 

「お?明るいなぁ。」

 

「そうね。」

 

 

 

真っ暗だった廊下に明かりがつけられ、

つい顔が綻ぶ。

 

 

 

「・・・・・。」

 

 

腕の中で抱え込んだかごめを見つめた。

 

さっきまで、薄暗い中に浮かんで見えていた

かごめの白い柔肌が目に飛び込んでくる。

 

 

 

うっすらと汗を帯びる中にも、桜色に染め上げたのは、

自分の愛した激しさからか・・・。

 

 

その視線に気付いたように、かごめは上目遣いに犬夜叉へと顔を向けた。

 

 

 

「・・・・・。」

 

 

そんな一瞬の後。

 

何気に気がついたのは・・・。

 

 

 

「きゃああああ!」

 

「うわ!なんだよ?!」

 

「いや!電気消してよ!」

 

「なんでだよ?」

 

「犬夜叉、服着てないでしょ!」

 

「って、おめぇも着てねえじゃねぇか!」

 

 

 

そう。

 

お互いが一糸纏わぬ姿で、廊下へと犬夜叉の腕に

抱えられ出てきたことを今になって気がついた。

 

 

 

「いやよ!見ないで!」

 

 

両手で犬夜叉の顔を覆い、目を塞ぐ。

 

 

「ば!何しやがる!」

 

 

小さな白い手が犬夜叉の視界を遮るも、

かごめを抱き抱えている腕を離すわけにもいかない。

 

顔を大きく左右に振り、必死に手を振り解こうと試みる。

だが、かごめも負けじと手の力を緩めることなく押さえ込んだ。

 

 

「下ろしてよ!」

 

「手ぇ離せ!」

 

「いやよ!恥ずかしい!」

 

「いいから、手をどけろ!」

 

「見ないでってば!」

 

 

 

 

 

 

「歩けねえくせに!」

 

「〜〜〜〜!」

 

 

 

 

 

再び、その一言に黙り込む。

 

 

「ほら、ぐだぐだ行ってねぇで、風呂に入りたいんだろ?」

 

「そうだけど・・・。」

 

 

犬夜叉の腕の中で何やら考え込むかごめ。

 

これでは、いつまで経っても風呂場までたどり着けない。

だが、頑として自分の裸体を明かりの下に晒すことを拒む。

 

 

(立てねぇくせに何考えてんだよ!)

 

 

犬夜叉は立ち止まり、小さく縮こまって考え込むかごめの様子を伺った。

 

暫くして、何やら意を決したかごめの眼差しが

上目遣いに犬夜叉を見つめた。

 

 

 

「じゃ、こうしましょう。」

 

「あ?なんだよ?」

 

「目隠しして。」

 

「・・・はぁ?・・・目隠しぃ?」

 

「そ。目隠し。」

 

 

大きく目を見開き、突飛な発言に耳を疑う犬夜叉。

その発想はどこから来るのやら・・・。

 

 

「ばっかじゃねぇか?」

 

「馬鹿って何よ!・・・恥ずかしいんだから!」

 

 

 

 

 

あれほど、自分の意のままに体を開いていたのに、

何を今更・・・。

 

大体、『恥ずかしい』ってなんだよ!

 

 

 

 

 

「お前、本気でそんなこと言ってんのか?」

 

「見てんのも見られるのも恥ずかしいの!」

 

「わかんねぇよ。」

 

「・・・じゃ、電気消して!」

 

 

 

呆れ顔で、再び腕の中のかごめに目を落とす。

 

 

 

「お前な、歩けねぇんだぞ?それを抱える俺が目隠ししたら、どうなると思う?」

 

「・・・?!」

 

「な?」

 

「・・・・。」

 

「おとなしくしてろ。」

 

 

 

「・・・・・・わかったわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、電気消して!」

 

「・・・・・ったく。」

 

 

 

カチッ

 

 

 

「あ、真っ暗になった。」

 

 

声からして安堵する様子を窺える、かごめの弾む声。

 

 

「これでいいのか?」

 

「うん。・・・でも。」

 

「今度は何だよ!」

 

「・・・犬夜叉の足元危ないよね?」

 

「・・・あのな・・・。」

 

 

 

思わずついた溜息がすぐ顔の真下にある

かごめの頭に吹きかけてしまった。

 

その溜息に、かごめが犬夜叉のほうを向いた。

 

 

 

 

「・・・俺は夜目が利くから、明かりがあってもなくても関係ねぇんだよ。」

 

「あ、そっか。」

 

「ほら、いい加減、階下【した】いくぞ。」

 

「・・・うん。」

 

 

ようやく階段に一歩足を掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり目隠ししてよ!見ないで!あんたばっかり見えちゃうじゃない!」

 

「お前、ほんっとにいい加減にしろよ!」

 

 

 

 

 

 

トン、トン、トン・・・

 

 

 

 

 

 

ふてくされ、そのまま階下にある浴室へと

結局、電気ひとつつけないまま降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく浴室「風呂」までついた二人だったが、

ここでも同じような論争が繰り広げられたのはいうまでもない。

 

 

 

「電気つけないでよ。」

 

「俺は見えるんだよ。」

 

「だったら、見ないで!」

 

「じゃ、風呂どうやって入るんだよ?」

 

「・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

立てない(足腰が上がらない)体ではシャワーを浴びることができない。

 

結局、犬夜叉の意見を譲歩に譲歩しまくって、

致し方なく、その意見に随うことを余儀なくされたかごめ。

 

 

 

犬夜叉が湯船の中でかごめを膝の上に乗せ、湯に浸ることと相成った・・・。

 

 

 

 

 

「真っ暗なお風呂って怖い・・・よね。」

 

 

真っ暗な浴室で身を屈み、

おそるおそる回りの景色を見回した。

 

 

慣れているはずのタイルの壁も

暗闇の中では、まるで知らない場所に

初めて訪れたかのように映る。

 

 

どこか呆れたように、

湯船の淵に両肘をつき、

足を伸ばし、湯に浸る犬夜叉は、

再び溜息をつき、かごめに言った。

 

 

「そうまでして入りたいって言ってやがったのはどいつだよ?」

 

「そりゃ、そうだけど・・・。」

 

 

 

 

 

 

普段、湯船に入ることもほとんどなかった犬夜叉が

足腰の立たないかごめのために湯に浸かり、かごめの体を支えていた。

 

 

伸ばした足の間にちょこんと座るかごめ。

 

顎まで湯に入り、どこかそわそわしながら、

湯船に浸かっている。

 

 

それはまるで、小さな子供をお風呂に入れているお父さんのよう・・・。

 

 

 

 

 

「ほら、ちゃんと湯に浸かれよ。」

 

肩を自分の胸のほうへと引き寄せた。

 

/////

 

 

わかってはいたが、改めて知るかごめの華奢な体。

 

 

 

 

愛おし気に、闇に浮かぶ白い背中を見つめた。

 

 

どれほど味わっても満ち足りてこない欲望。

 

自分よりも一回りも二回りも小さな体の奥に潜む愛欲の泉に

魅了され、虜となっていく自分。

 

 

(かごめ・・・)

 

 

目の前の白い背中をただ愛おしさあまりに

貪り食らい尽きたい・・・

 

何度でも何度でも・・・!

 

 

それは、麻薬のように・・・

 

そんな感情に浸る犬夜叉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっぱりして気持いい・・・。」

 

目が慣れ、犬夜叉も傍にいてくれたせいか、

湯に浸る心地よさを味わい始めた。

 

「さっきまで怖い怖い言ってたくせによ。」

 

「いいじゃない!お風呂好きなんだもの。」

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 

徐に髪をかきあげ、ピンで巻き上げる、その仕草一つ一つを

背後で、じっと見つめる。

 

 

 

温い湯の中で浸かりながらも、

再び自分の奥底で何かがざわめく感情が沸き起こってくる。

 

 

 

(なんか、やべぇかも・・・)

 

 

 

 

 

じんわりと沸き起こる感情。

 

その様子に、まるで気にもとめず、朗らかな様子で振り向くかごめは、

自分を乗せ抱える犬夜叉に振り向き、どこか悪戯っ子な眼差しで

「犬夜叉も髪縛る?」と尋ねた。

 

 

 

 

「けっ!馬鹿いってんじゃねぇよ。」

 

「編んであげるのに。」

 

「いいっての。」

 

「そう?」

 

 

 

 

 

水に濡れしたくない・・・と結い上げた髪の毛。

後れ毛が水に僅かながらに付け入り、水面に漂い、

犬夜叉の首下に靡いてくる。

 

 

 

犬夜叉は、そっと掌で湯を掬い、かごめの肩にかけた。

 

 

「気持いい・・・。」

 

「そうか?」

 

 

もう一度、肩へと湯をかける。

 

さっきまでの不機嫌さはどこへ消えていったのか。

 

かごめは、肩をすぼめ、くすくすと笑っていた。

 

 

「なにがおかしい?」

 

「だって・・・。」

 

「なんだよ?」

 

「犬夜叉があたしのこと、お風呂に入れてくれるなんて信じらんない。」

 

「・・・そうか?」

 

 

かごめは笑みを浮かべながら、振り返り、

水に沈むように犬夜叉の胸に顔を埋め、

そっと目を閉じる。

 

 

 

「髪、濡れるぞ。」

 

「いいよ。別に。」

 

「・・・・・」

 

 

水尾とだけが漂う浴室の中。

胸に顔を寄せ、身を預けるかごめに目をやる。

 

 

その表情は、頬を薄らに染め、

微かに微笑んでいた。

 

 

「・・・かごめ?」

 

「ん?何?」

 

 

湯船の両側の淵についていた肘を外し、

かごめの体に腕を回し、抱きしめた。

 

 

「俺は、こうしているのがいい・・・。」

 

「・・・・・!」

 

 

 

真っ暗な浴室で湯船に浸かる二人。

 

犬夜叉は、ぎゅっとかごめの体を抱きしめた。

 

 

 

夜目に映るかごめの白い肢体が

さらに色づき、抱えた腕に高ぶる感情と体温を、

そして、その感触を伝えてくる。

 

 

(かごめ・・・!)

 

 

抱きしめたかごめの肢体に触れる悦びに浸る

恍惚の眼差し。

 

再び、沸き起こる男の欲情。

 

 

 

 

 

 

 

かごめを抱きしめ、その悦に浸る自分を思い返す。

 

 

暗がりの中、夜目が聞くのが自分だけであることに

心なしか感謝さえ感じる自分。

 

 

今の自分の顔なぞ、かごめに見せることに『恥ずかしさ』を知る。

 

 

 

その表情は、決して誰にも見せたこともないし、

見せることもありはしなかった、過去。

 

そう。

することが今の今までなかったから・・・。

 

安らぎと惜しげなく注がれる愛情とは

こんなにも自分の乾いた心に染み渡るものなのか。

 

 

 

 

「桔梗」とは確かに感情の上で繋がってはいた。

 

いや、今でも、その存在は大きく自分自身のどこかに

占めてはいる。

 

それは、「陰り」の如く、圧し掛かる重い感情。

 

 

 

だが、かごめは違った。

 

声ひとつさえ、心の奥の氷を溶かす暖かいぬくもり。

 

 

 

 

 

心の繋がりと体の繋がりと・・・

 

 

 

 

 

 

 

「かごめ・・・。」

 

「なあに?犬夜叉・・・。」

 

「こうしていると、結構『風呂』ってのも悪かねぇな?」

 

「でも、ちょっと恥ずかしいかも・・・。」

 

「そうか?」

 

 

やがて、かごめは犬夜叉から体を起こし、

湯船の淵に手を掛けると、上半身を起こした。

 

ザバァ・・・っとお湯が溢れ毀れて流れていく。

 

 

「もう立てるわ。」

 

二人分の体積を淵すれすれにせき止めていた

水嵩がかごめの体積分だけを減らし、

犬夜叉の胸元から引いた湯が

離れていった部分を冷気に晒す。

 

 

 

 

「どうした?」

 

「もう上がろうかな?」

 

「上がるのか?」

 

「うん。汗も流せたし。」

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

「ありがとうね、犬夜叉。」

 

「おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身を伸ばした背に流れる水滴が、

つつぅっと下に落ちてくる。

 

その様子をただ、じっと見つめる犬夜叉。

 

自分の目の前に広がる白い背中と腰と、その下の・・・。

 

 

 

犬夜叉は、静かに身を起こし、

湯船の淵にかけられたかごめの手を

後ろから、そっと重ねた。

 

 

 

そのまま、ゆっくりと

かごめの小さな背に重なり、

犬夜叉の筋肉質の胸が触れる。

 

 

 

「・・・何?犬夜叉?」

 

 

 

思わぬ行動に戸惑いながら、後ろのほうを振り向いた。

 

肩越しに犬夜叉の前髪が見える。

 

 

「どうしたの?」

 

 

息がかかるほどの距離。

 

犬夜叉は、かごめの肩に口を落としていた。

 

 

「ちょっと、犬夜叉!」

 

「・・・・・」

 

 

肩に這う舌触り。

時折、肌に感じる牙の先端。

 

淵ごと重ねた手に力が入る。

 

 

「ねぇ、離して?」

 

 

応えは返らない。

 

言葉の代わりに重ねた手に力を入れ、かごめの動きを妨げた。

 

 

「ねぇってば、犬夜叉?」

 

「・・・・・・・ど、だ。」

 

「?・・・なんて言ったの?」

 

 

聞き返すかごめをよそに添えた手の片方を離し、

折れそうなほどに細い引き締まった腰の上への手を伸ばす。

 

 

「ちょっと・・・!」

 

「・・・もう一度だ。」

 

「え!」

 

 

犬夜叉は、かごめの腰に両手を掻け、ぐっと自分の腰へと押し付けた。

 

 

 

かごめの体に触れた犬夜叉の体の中心の熱い存在。

 

 

「!!!!」

 

「な?もう一度、だ。」

 

 

 

 

「え?・・・もう一度って・・・、あ!」

 

 

その存在に気付いたときには、もう既に遅かった。

 

 

犬夜叉は、かごめの揺れ下がった乳房を鷲掴みにし、

更に体を密着させ、無防備な裸体に食らい始めた。

 

 

「いや!だめよ・・・!」

 

その言葉の返事の代わりに、肩に噛み付く。

 

「・・・あ!」

 

牙こそ、剥き出しにはしなかったものの、

くっきりと歯型がついた。

 

「やめて・・・。」

 

 

 

(そんな声聞いちゃ、ますます止めれねぇ・・・!)

 

 

 

湯船の中で跪いたまま、

再び、激しい行為に持ち込もうと

かごめの体に圧し掛かる勢いで体中に手を這わす。

 

 

 

「あ・・・!」

 

 

思わず、漏れた声がタイル地の壁の中で木霊するかのように響き渡った。

 

 

「あっ・・・!やめて・・・。」

 

「どうして?」

 

「いやなの!・・・こんなところで・・・!」

 

 

だが、犬夜叉の手にはかごめの本心ではないことは

身を以ってわかっていた。

 

 

湯に浸かる下半身を後ろから、

背筋に沿ってなぞり、最後に行き着く

その秘境に指を入れたとき。

 

『水』と違う潤いの感触。

 

 

「なら、部屋に行く。」

 

「えっ?!」

 

 

 

再び、かごめの体を抱き上げると、

濡れたお互いの体を拭うことなく、

階段を駆け上がっていく。

 

 

(まだだ!まだおさまらねぇ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドの上に再び、押し倒すようにかごめの体を組み敷く。

 

既に確かめたかごめの受け入れ。

 

 

 

さっきの浴室での行為が犬夜叉自身に再び、

愛欲の炎を燃え滾らせた。

 

 

 

 

 

「シーツが濡れちゃうじゃない!」

 

「構うか!」

 

 

かごめの抗議の声も何もなかった。

 

 

かごめの体をくるっと回し、うつ伏せに寝かせる。

 

 

「あ!」

 

 

再び、湯船での行為の再現。

 

 

 

かごめの手の甲に自分の手を当て、

背中の上に圧し掛かる。

 

 

かごめの背に残る水滴が犬夜叉の胸を濡らした。

 

 

 

 

 

 

 

「かごめ・・・!」

 

背に感じる圧迫感が生々しく体温を言葉と共に伝える。

 

「・・あ!・・・犬・・・夜叉!」

 

 

 

シーツとかごめの体の間に手を入れ、ぐっと胸を弄った。

 

 

「あ・・・。」

 

狭い空間をすり抜け、頂点を摘み出す。

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

(嫌じゃないんだろう?)

 

 

もう片方を背筋に沿い、下へと這わした。

 

「・・・あぁ!・・・。」

 

 

 

その手に仰け反るかのように反応するかごめ。

 

犬夜叉は黙って、その反応を眺めつつ、

後ろの割れ目に沿って、じっくりと手を入れる。

 

だが、足を閉じ、身を強張らせていたその場所には、

容易に指は入らない。

 

 

犬夜叉は、かごめの足の間に割り込むように

自分の足を捻じ込んだ。

 

 

「あ・・・、いや!。」

 

「だめだ。・・・力抜け・・・。」

 

「お願いだから・・・、もう・・・。」

 

 

嫌がる言葉の間に喘ぐ声が思わず漏れる。

 

足を開かせ、再び後ろから手をいれ、

花弁へと触れると、背中が再び、ぴくっと反応した。

 

 

指に伝ってくる透明の蜜。

 

 

 

 

「いいって言ってるぞ、お前が・・・。」

 

「言わないで・・・。」

 

 

指で中を掻きまわす。

 

 

「あ!・・・ああ!」

 

「素直に言えよ・・・。」

 

 

指を動かし、言葉を促す。

 

 

 

「俺は欲しい。お前は・・・?」

 

「嫌よ、・・・あ!あああ!」

 

 

動かす手を早めつつ、かごめの腰を上へと持ち上げる。

 

 

シーツから引き離されると、

それはまさに動物的な格好となり、

さらにかごめの羞恥心を煽った。

 

 

犬夜叉は、もう待ちきれないと言わんばかりの

自分自身を持ち、秘境の入り口へと宛がった。

 

 

「・・・どうする?」

 

 

表面だけを塗りこむように摩る先端。

 

 

「いや・・・よ。」

 

 

もう片手は、持ち上げ曝け出された

上半身の小さな突起を掴み、弄ぶ。

 

 

「・・・俺は欲しい。・・・お前はどうしたい・・・?」

 

 

自身を持つ手は既に入り口へと向かっていた。

 

だが、まだ浅く、かごめの体を焦らさせる。

 

 

 

「・・・あ・・!・・・い、犬や・・・!」

 

 

それは、苦しみに近いほどと懇願。

 

 

「・・・どうしたいんだ?・・・言えよ・・・!」

 

「・・・あぁ・・・!はああ!・・・いや・・・。」

 

 

手を前に回し、もう一度蜜の出口を弄る。

 

 

「・・・ほら・・・。」

 

「・・ううぅ!」

 

 

響き渡る喘ぎ。

 

小さな手がぐっとシーツを握り締め、顔の前へと引き寄せ、

ベッドに頬を押し付けた。

 

僅かに残る理性がかごめの快楽への奔走を阻むように

唇を噛み締め、犬夜叉が欲しいという言葉を飲み込ませる。

 

だが、彼の手はそれを許さなかった。

 

 

手を添えたまま、かごめの背に口を落とし、

その垣根を取り剥がそうと上へ下へと沿いなぞる。

 

 

 

「ああぁ!・・・はぁぁ!」

 

 

 

下腹部の更に奥で何かがざわめく。

 

その刺激は、頭の中を朦朧とさせながらも、

早く、その呪縛を解いて欲しいと騒ぎ立てた。

 

 

 

「・・・このまま、いいか?」

 

 

「う・・・!・・・あぁ!」

 

 

手の動きが秘所に宛がわれ、怪しくなぞる存在に

理性という感情は弾け飛んだ。

 

 

 

 

曝け出された女の本性がついに口を開く。

 

 

「かごめ・・・!・・・もう。・・・いいか?」

 

 

「・・・あ!・・・お願い・・・!きて・・・!」

 

 

 

 

自ら足を開き、腰を上げ、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙がシーツに擦り付けられ、薄く染みとなっていく。

 

腰を抱え、無体に打ち付けられる下腹部に

軽い痛みを覚えつつも官能の波に翻弄されるかのように、

添えられた犬夜叉の手に全てを委ねた。

 

 

部屋に響き渡る、肌と肌が叩きつけられる音が早まった。

 

 

 

「あ!・・・あ!・・・ああ!」

 

 

蕾の先端が揺れながらもシーツに擦られ、更に敏感になっていく。

 

 

「は!・・・はぁ・・・。」

 

 

「あぁっ!・・・あぁっ!」

 

 

高揚していく意識の中、

犬夜叉はかごめの秘部から

それこそ、鞘から引き抜くように

自身を抜いた。

 

 

「あ・・・。」

 

 

そのまま、かごめの体を仰向かせ、膝を持ち上げる。

 

肩に担ぐように、足を持ち上げ、

再び自身を勢いよく突き刺した。

 

 

「きゃ!・・・ああ!あ!」

 

「っく・・・、かご・・・め・・・。」

 

「あぁ!・・・あ!・・・」

 

 

再び、訪れる白い靄。

意識さえ遠のいていく。

 

さほど、回数さえ重ねていないはずの自分に

これほどまでの感覚がどこに潜んでいたのか?

 

 

「もう・・・、だめ・・・!」

 

「・・・俺も・・・、いきそうだ・・・!」

 

 

腰を激しく動かし、かごめの体に覆い被さる。

 

 

「・・・いいか?・・・かごめ・・・?」

 

「あ、あた・・・し、ああ!・・・あっ!」

 

 

自身に感じる、締め付けるような圧迫感。

 

「あああぁ・・・!」

 

 

 

 

やがて、かごめの体から力が抜けていく。

 

 

それと同時に犬夜叉も、一瞬息を止め、

大きく体を仰け反った。

 

 

「はぁっ・・・、く・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かごめの頭を抱え、唇をそっと重ねる。

 

力なく、それでも、その想いに応えようと

軽く口を開き、中への進入を許すかごめ。

 

 

 

 

「かごめ・・・。」

 

抱え込んだ腕に力を入れ、ぐったりとした

かごめの体を抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・おい、かごめ・・・?」

 

 

 

冷静を取り戻し、腕の中のかごめを見つめた。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

小さく息の音だけが、獣の耳に入るばかり。

 

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

もう、そこにかごめの意識はなかった。

 

 

 

頬に残された涙の後だけが、

その行為がどれほどのものだったかを、

物言わず語っただけで、

それから後は瞳を伏せたまま、

言葉が出てくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・寝ちまったのか?」

 

 

 

 

少し、湿ったシーツの上でかごめの位置を直すと、

そっとタオルケットを首の上までかけた。

 

 

自分もその脇に横たわり、

眠りついたかごめを見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が、・・・お前だけが・・・いいんだ・・・。」

 

 

そういって、静かにかごめの頭を持ち上げ、

下に腕を通す。

 

 

かごめの体を引き寄せ、

もう片方で体を抱きしめ、自分もそっと目を閉じる。

 

すぐ脇で聞こえる小さな寝息に聞き入るように耳を澄ます。

 

 

 

 

「離さなねぇ・・・。かごめ・・・。」

 

 

洩らした言葉に薄目を開け、もう一度かごめの横顔を覗き込んだ。

 

その口元は、どこか笑みを帯び、金色の瞳がふっと細む。

 

 

 

 

 

「・・・お前だけだ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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