乱 ―3― (2007.5.12)
『愛玩でしかないのか・・・!』
耳に残る恭平の言葉。
桔梗の墓前。
夕日に溶けて消えていきそうな背中を見てしまったあの日。
私は・・・・
「かご・・・め?」
犬夜叉は跪いたまま、
身を竦め、壁際まで後ずさりするかごめを見つめるだけで
それ以上何も出来ず、名を呼ぶ以外、言葉も出なかった。
見開いた金の眼差しが闇の中、真っ直ぐに自分をただ見つめている。
犬夜叉・・・
目頭が熱くなる。
見つめれば見つめるほど、沸き起こる憫諒の思い・・・。
一瞬でも気を許すものなら、
大粒の涙が溢れ出てもおかしくない。
そう思えるほどに真っ直ぐに自分を捉えて離さない眼差し。
どうして、背を向けることなど出来ようか。
その瞳は間違いなく自分を見ているはずなのに、
どこに訝る必要があるのだろうか・・・。
夕日に溶けていく銀の髪。
緩やかに吹く風さえも桔梗の墓標と犬夜叉の間に
入る隙間を与えなかったかのように思えた、あの光景。
見てようが、見ていまいが、
それは真実。
犬夜叉の中の現実。
(だめよ、かごめ。ここであんたが泣いてどうするの?)
(自分が泣いても、過去は何一つ変わるものじゃないのよ・・・)
(彼の悲しみはあたしが一番知らなきゃいけないじゃない・・・)
・・・・・あたしが抱きしめなくて、誰が彼を抱きしめてあげるの?
やがて、かごめは、自分をさも不安そうに見つめる犬夜叉に
そっと微笑む。
「待って、犬夜叉。」
『愛玩でしかないのか・・・!』
そうじゃない・・・・
違う・・・
それは違うのよ・・・
愛玩とか、そんなんじゃないの
「え?」
「自分で脱ぐ・・・から。・・・ね?待って。」
僅かに躊躇ったかのように一瞬間をおいた後、
かごめは痛い足を軽くあげ、
静かにスカートのファスナーを下ろした。
伏せた睫毛に薄く滲む涙の跡を隠しつつ、
かごめは微笑む。
その涙を決して犬夜叉に見せないように
前髪で顔を隠すよう俯きながら、
掴んでいたスカートから手を離す。
それは微かな音を立て、
犬夜叉が口付けていた足首まで滑り落ちていく。
そして、最後に残る一枚。
かごめは黙ったまま・・・・。
犬夜叉も跪いたまま・・・・。
目の前に白く輝く絹のような滑らかな肌が全て曝け出されると、
犬夜叉は薄っすらと目を細め、
やがて、引き寄せられるかのように
その太ももに口付け、そして、抱きしめた。
その感触に一瞬ぴくりと反応するも、
自分の太ももを摩るかのように抱きしめる犬夜叉を
かごめは静かに見下ろした。
私は・・・
黙って、自分の足を抱きしめた犬夜叉の頭を
白く細い腕が優しく包み込んでいく。
「かごめ・・・。」
「犬夜叉・・・。」
(何故、俺の腕から・・・・)
今まで、一度たりともなかったこと。
嫌がるかごめに無理強いをしたことはあった。
力でねじ伏せて、
そして・・・。
だが、それとも違う抵抗をかごめがしたかに思われた。
しかし、それも違った。
一瞬の戸惑いは、
逆にかごめが何か明白な意思を以って
自分を抱きしめているようにも思えた。
幼き頃、まだ母親が生きていたときのことを思い出す。
枕物語に覚えている母の声。
今夜のように風の強く吹き荒れた、
そんな眠れない夜の御伽話。
隙間風に帳【とばり】が小さく揺れていたことさえ
子供心に恐ろしく、母の袖を握り締めていた、あの頃。
―――その昔、国を作りたもうた夫婦【めおと】の神がいた
―――その神は最愛の妻を亡くし、嘆き悲しんだ
―――やがて、その涙から新しい神が生まれた
―――夫婦【めおと】神は森の中、二つの大岩となり
―――久遠の愛を誓うかのように、寄り添い二つに肩を並べる
―――その神から生まれ出た新しい神の神体は
―――そのすぐ傍の古井戸にあり・・・・
あの時のお袋の目は、親父のことを思い偲ぶかのように
遠く儚い目をしていた・・・
「かごめ・・・。」
触れ合う肌の温もり。
自分とは全く異なる質感を持つ女特有の柔肌に
吸い込まれるかのように溶けゆく鋼の肉体。
その出会いは運命であったのか。
それとも奇跡だったのであろうか。
骨食いの井戸と呼ばれる封印されていた森の古井戸から
突如出現したかごめを見たとき。
かつて、愛した女の陰りをそこに感じた。
だが、今は違う。
神の涙から生まれた、もう一人の神をかごめの後ろに見る。
愛を失った途方も無い悲しみの中より生まれ出た女神。
最愛の妻を亡くした夫が嘆き悲しみ、流した涙から生まれた
もう一人の愛の化身。
桔梗が天へとその御霊を見送ったとき。
それは初めて流した涙だったのだろう。
そのすぐ傍にはかごめがいた・・・。
古井戸から時を超え、自分と出合った少女がすぐ傍に・・・。
「かご・・・め・・・。」
「犬夜叉・・・。」
白く細い腕がそっと優しく自分を包み込む。
それまで、戸惑っていた犬夜叉の手が力漲ったかのように
ぐっとかごめの体を掴むと
そのまま、床に広げられていた緋の衣の上へと横たえた。
緋の衣にたゆとう二人の影がひとつに重なる。
「足、痛てぇくせに無理して立ち上がるんじゃねぇ。」
「犬夜叉・・・・。」
小屋の外では、春の雨足がますます強まり、
激しい物音を立て屋根に叩きつけていた。
何度となく交わす口付け。
かごめの柔らかい息の温度が高まっていく。
重なり合う肌の部分にも火照りを見せ始め、
薄っすらと桜色にと染め上がりゆく。
すっと首筋を這うと、溜息とともに
細い首がくっと仰け反りあがる。
そのまま、さらに下のほうへと顔を映すと
さらに柔らかい膨よかな双丘の谷間へと辿り着く。
その中心から微かに鼓動が響いてくる。
脈打つ血潮。
生きる証の音の心地よさにしばし聞き入る。
やがて、その手はゆっくりと双丘の丘へと這い、
弾力のある独特の感触を満遍となく味わうと
かごめの息遣いもまた荒く漏れてくるのが伝わってきた。
「かごめ・・・。」
「ん・・・、あ・・・ん。」
「・・・・・。」
耳元で囁く声は激しい雨音さえも寄せつけない。
犬夜叉は今までにないほど濃く熱く、真下にある肢体を愛でる。
「あ・・・・!や・・・あ・・・!」
ふとかごめの顔を見ると、伏せた瞳、瞼に薄っすらと
涙らしき濡れているのに気がついた。
―――――帰り際、かごめ様は泣いてらしたようだぞ
ふいに思い出した弥勒の言葉。
実家に帰るところを見つけたとき。
思わず抱きしめた。
―――――『三日くらいしたら、こっち【戦国時代】に帰ってくるから・・・』
三日?
三日がどうした
行くのか?
帰るのか?
俺の傍から
離れるのか?
帰るというかごめを見ているうちに、
無性に全てが欲しくなった。
抱きたくて自分が止められなくなった。
欲情、劣情。
そんな簡単な感情では説明出来ない。
ただ、欲しい。
それなのに、どういうことだ?
他の奴がかごめを?
そう思った途端。
更に激しい愛撫を始めた。
「ああ!・・・ん・・・、いやぁ!」
高らかに響くかごめの喘ぐ声。
手を押さえ、足を持ち上げ、舌を這わし、攻め続ける。
「ああ!・・・・や・・・やめ・・・。・・・いや・・・!」
「・・・どうした?・・・ん?」
「そ、そん・・・な・・・。ああ!」
「我慢するな・・・。声出せ!」
自分の知る限り、かごめのもっとも敏感に反応を示すであろう箇所を
幾重にも繰り返し、攻め続ける。
かごめの頬は高揚を過ぎ、眉間に深い皺を立て、
歓喜・・・というよりはむしろ悲痛に近い、
絞りだしたように喘ぐ声を上げ立てた。
「・・・やだ!いや・・・!あ・・・!」
「・・・・。」
「いや!おかしく・・・な・・・る・・・!ああ!」
「・・・いいさ。なれ・・・よ・・・。」
止むことをしない犬夜叉の手の動きに
かごめは逃げるように何度も体を引こうとするが、
捕まえた獲物を逃がしやしないという男の支配感が
それを許さない。
犬夜叉は、かごめの花弁の奥さえも既に攻めの手を
何度となく激しく落とし込む。
指を締め付ける蠢く肉壁。
内腿にまで滴り落ちていきそうな溢れんばかりの蜜蝋。
「いつもより・・・多い・・・ぞ?かごめ・・・。」
「・・・・ん!やぁ・・・!」
指先に絡め取った蜜蝋をさらに拭い、
かごめの艶やかな唇にそっと宛がう。
「・・・あ、・・・や・・・、犬夜叉・・・!」
自分に宛がわれた手のおかげか、
一瞬怯んだかのように止めた愛撫の隙に
かごめは身を起こし、犬夜叉を下にと形を変える。
一瞬、怒ったかのように顔を逸らしたかごめだったが、
宛がわれた指先をすっと手に取り、己の蜜を味わうかのように
鋭い爪から、ゆっくりと飲み込むように口にと運ぶ。
そこから、手の甲へ、腕へと進み、
やがて鋼のように逞しい胸板に滑り込み、
更に下のほうへと顔を埋めていく。
「かご・・・め・・・?」
「・・・ん・・・ん・・・。」
一瞬触れた先端。
張り詰めた感触が直に伝わる。
「・・・う・・・あ・・・・。」
「・・・・・。」
それはさも自然にと、犬夜叉の自身をそっと口に含み、
ゆっくりと舌を這わし、輪郭をなぞる。
犬夜叉の喘ぎが静かに漏れてくる。
外では嵐のように吹き荒れる風雨も
小屋の中では静寂そのもので
ただ熱くなった息遣いだけが闇に溶け入る。
「は!・・・あ!・・・かごめ・・・!」
犬夜叉は自身を愛するかごめの漆黒の髪を何度も撫で回しては、
つま先を伸ばし、更に熱くなっていく腰元に神経を尖らせた。